8月28日の米国株式市場は、主要3指数がそろって下落した。
ただし、大きく崩れたわけではない。
S&P500は0.25%安、NASDAQ総合は0.52%安、NYダウはほぼ横ばい。
前日にNVIDIAの好決算を受けて大きく上昇したハイテク株には反動売りも入り、NVIDIA自身も4.6%下落した。
一方、個別株を見ると全く違う景色が見える。
この日のピックアップは、
Elastic(ESTC)だ。
検索・データ分析ソフトウェアを手掛けるElasticは、好決算と通期見通しの引き上げを受けて約18%上昇。
指数が小幅安となるなか、決算内容によって個別株の明暗が大きく分かれた一日となった。(reuters.com)
8月28日の米国市場
主要指数を確認しておこう。
指標
終値
前日比
NYダウ
53,559.99
-0.02%
S&P500
7,711.76
-0.25%
NASDAQ総合
26,402.42
-0.52%
Russell 2000
2,972.37
-1.39%
VIX指数
14.67
+1.10%
主要3指数はいずれも下落したものの、下げ幅そのものは大きくない。
一方で、小型株中心のRussell 2000は1.4%近く下落した。
VIX指数も14.67と依然として低い水準にあり、1.10%上昇したものの、市場が急激な恐怖状態に入ったわけではない。(washingtonpost.com)
FRBウォーシュ議長の発言で利上げ観測
この日の市場を動かした大きな材料が、FRBのケビン・ウォーシュ議長によるジャクソンホールでの講演だった。
ウォーシュ議長は、インフレ率がFRBの目標である2%へ十分な速度で向かっているとの確信が持てなければ、金融当局には「さらにやるべきことがある」との認識を示した。
これを受け、市場では9月の利上げ観測が強まった。
金利上昇は、将来の利益に対する期待が株価に大きく反映されるハイテク株や成長株にとって逆風になりやすい。
前日にNVIDIAを中心として大きく上昇したNASDAQも、この日は0.52%下落した。(reuters.com)
今日の1銘柄:Elastic
そんな地合いのなかで大きく買われたのがElasticだ。
Elasticは企業向けの検索、データ分析、セキュリティ、オブザーバビリティなどのソフトウェアを提供している。
近年ではAI向けの検索技術でも存在感を強めている。
8月28日の株価は約18%上昇し、97ドル台まで上昇した。(finance.yahoo.com)
きっかけは決算だった。
売上4億7800万ドル、EPSも予想超え
Elasticの四半期売上高は、
4億7810万ドル
前年同期比では、
+15.1%
となった。
市場予想は約4億7010万ドルだったため、売上高は予想を上回った。
調整後EPSは、
0.70ドル
市場予想の0.58ドルを約20%上回った。
さらに調整後営業利益も7726万ドルとなり、市場予想を上回っている。(stockstory.org)
単純に売上が伸びただけではない。
利益面でも市場の期待を上回ったことが、株価急騰につながった。
AIはソフトウェア企業を壊すのか
Elasticの上昇で興味深いのは、単なる好決算というだけではない。
現在のソフトウェア業界には、
「生成AIが既存のソフトウェア企業を破壊するのではないか」
という警戒がある。
AIがコードを書き、データを分析し、業務を自動化できるようになれば、従来型のSaaSや企業向けソフトウェアの価値が低下する可能性があるからだ。
しかし今回のElasticの決算は、その逆の可能性も示している。
Elasticの検索技術は、生成AIやRAG(検索拡張生成)などでも利用される。
AIが普及するほど、大量の企業データから必要な情報を高速で検索する技術の重要性も高まる。
ElasticにとってAIは競争相手であると同時に、需要を増やす材料にもなり得る。
通期見通しも引き上げ
市場が評価したもう一つの材料が、今後の見通しだ。
Elasticは次四半期の売上高について、
4億8600万~4億8700万ドル
を予想。
さらに通期売上高についても、
19億9800万~20億1000万ドル
へ見通しを引き上げた。
市場予想を上回る水準だ。(siliconangle.com)
AI関連需要が一時的なものではなく、今後の売上にもつながるという期待が株価に反映された。
一方、NVIDIAは4.6%下落
前日の主役だったNVIDIAは、この日は4.6%下落した。
前日は好決算を受けて8.7%上昇していたため、その反動や利益確定売りも出やすい状況だった。
さらにFRB議長の発言による金利上昇への警戒も、ハイテク株には重荷となった。
ただし、
前日 +8.7% 翌日 -4.6%
なので、2日間を通して見れば依然として決算前を上回る。
1日だけの値動きを見て「NVIDIA決算が評価されなかった」と判断するのは早い。
決算前後ではポジション調整や利益確定も大きく入りやすいため、数日間の値動きを見る必要がある。(barrons.com)
Marvellは10%安
半導体ではMarvell Technologyも大きく売られた。
株価は約10%下落。
同社は市場予想を上回る決算を発表し、見通しも引き上げた。
それでも株価は下落した。
背景にあるのは、AI関連銘柄に対する市場期待の高さだ。
Marvell株は前日までの年初来で184%上昇しており、「好決算」だけでは現在の株価をさらに押し上げるには足りなかった。(barrons.com)
これは前日のNVIDIAにも通じる。
AI関連株では、
良い決算を出すこと
ではなく、
極めて高い市場期待をさらに上回ること
まで要求されるようになっている。
PayPalは12.7%急落
この日はフィンテックでも大きな動きがあった。
PayPalは12.7%下落。
Stripeと投資会社Advent Internationalによる買収協議が終了したとの報道が売り材料となった。(barrons.com)
一方、Workdayは好決算などを受けて5.8%上昇。
Gapも約13%上昇した。
指数だけを見ると静かな一日だったが、個別株では10%を超える値動きが相次いだ。
今日のポイント
8月28日の米国市場を一言で表すなら、
「指数は静か、個別株は激しい」
という一日だった。
S&P500は-0.25%。
NASDAQは-0.52%。
ダウはほぼ横ばい。
VIXも14台だ。
指数だけを見れば、それほど大きな出来事があったようには見えない。
しかし個別株を見ると、
Elastic 約+18% Gap 約+13% Workday +5.8% NVIDIA -4.6% Marvell 約-10% PayPal -12.7%
と、大きく明暗が分かれている。(barrons.com)
昨日はNVIDIAが8.7%上昇し、巨大テクノロジー株が指数そのものを押し上げる相場だった。
今日はその逆だ。
指数はほとんど動いていないのに、企業ごとの決算や材料によって株価は大きく動いた。
そして今日のピックアップであるElasticの急騰は、もう一つ重要なことを示している。
AIは既存ソフトウェア企業の脅威になるだけではない。
AIによって需要を拡大できる企業には、依然として大きな資金が向かっている。
これからのAI相場では、「AI関連」というだけではなく、
AIによって実際に売上と利益を伸ばせる企業はどこなのか。
その選別が、さらに重要になってきそうだ。


