9月3日の米国市場は、主要3指数がそろって1%以上上昇した。
FRBのウォラー理事が、今後のインフレ指標次第では政策金利の据え置きを支持する考えを示し、追加利上げへの警戒が後退。米国債利回りが低下し、テクノロジー株や金融株を中心に買いが広がった。
そのなかで目立ったのが、個人向け金融アプリを運営するRobinhood Marketsだ。
株価は16.57%上昇し、124.72ドルで取引を終了した。
Robinhoodは、もはや「米国の若者が株や暗号資産を売買するアプリ」だけではない。
同社では、スポーツや政治、経済など、現実に起きる出来事の結果を売買する「予測市場」が急成長し、すでに株式取引を上回る収益源になっている。
9月3日の米国市場
主要指数を確認しておこう。
指標
終値
前日比
NYダウ
53,686.11
+1.18%
S&P500
7,747.71
+1.06%
NASDAQ総合
26,584.06
+1.40%
ラッセル2000
2,968.27
+0.51%
VIX指数
14.32
-5.79%
主要3指数は2日続けて上昇した。
NASDAQは1.40%高と主要指数のなかで最も強く、NYダウも624.16ドル上昇。S&P500では11業種のうち8業種が上昇した。
ニューヨーク証券取引所では、上昇銘柄数が下落銘柄数のおよそ2倍となっている。
前日はDellとNVIDIAなど一部のAI関連株が市場を押し上げたが、この日は金融、一般消費財、ソフトウェアなどにも買いが広がった。
利上げ確率を下げたウォラー理事の発言
市場上昇のきっかけとなったのが、FRBのクリストファー・ウォラー理事の発言だ。
ウォラー理事は、今後発表されるインフレ指標で物価上昇圧力の鈍化が確認できれば、9月のFOMCで政策金利の据え置きを支持する考えを示した。
この発言を受け、市場が見込む9月の利上げ確率は約63%から約50%まで低下した。
米国10年債利回りも4.74%台へ低下。
金利上昇に弱いテクノロジー株や、暗号資産を含むリスク資産に買いが入りやすくなった。
ただし、FRBが利上げを完全に見送ると決まったわけではない。
景気は強いが、物価も高い
9月3日に発表された8月のISM非製造業景況指数は55.4となり、7月の54.1から上昇した。
市場予想の54.2も上回っている。
50を超えるとサービス業の拡大を示すため、米国景気は依然として底堅い。
新規受注指数は60.9となり、2023年2月以来の高水準へ上昇した。
一方、企業が支払う仕入価格を示す指数も70.3から72.6へ上昇。2022年10月以来の高水準となった。
つまり、
景気は強い。
しかし、物価上昇圧力も強い。
という状態だ。
週間の新規失業保険申請件数も20万6,000件にとどまり、解雇が急増している様子は見られない。
この日の株式市場はウォラー理事の発言を好感したが、経済指標だけを見れば、追加利上げの可能性が消えたとはいえない。
今日の1銘柄:Robinhood
今回取り上げる1銘柄は、Robinhood Marketsだ。
Robinhoodは、株式、オプション、暗号資産などをスマートフォンから売買できる個人向け金融プラットフォームを運営している。
取引手数料無料の証券アプリとして利用者を増やし、2021年のゲームストップ騒動では、個人投資家による「ミーム株取引」の中心的な存在となった。
そのため、現在でもRobinhoodには、
個人投資家の売買が増えると儲かる会社
暗号資産価格が上昇すると買われる会社
という印象が強い。
実際、9月3日はビットコインが約4%上昇し、5月以来の高値圏まで回復した。
Coinbaseは10.1%、Strategyは17.6%上昇しており、Robinhoodの急騰にも暗号資産市場の回復が影響している。
しかし、今回の上昇理由はそれだけではない。
Robinhoodは「証券アプリ」から金融スーパーアプリへ
Morgan StanleyはRobinhoodの投資判断を「イコールウェイト」から「オーバーウェイト」へ引き上げ、目標株価を124ドルから150ドルへ引き上げた。
Scotiabankも強気の投資判断で調査を開始し、Piper Sandlerは目標株価を145ドルへ引き上げている。
市場が評価し始めているのは、Robinhoodの収益源が株式や暗号資産の売買だけではなくなっていることだ。
同社は現在、次のような事業へ範囲を広げている。
・株式、オプション取引
・暗号資産取引
・有料会員サービス「Robinhood Gold」
・クレジットカード
・銀行サービス
・資産運用
・退職口座
・信用取引
・予測市場
Robinhoodによると、年間換算売上高が1億ドルを超える事業は13分野まで増えた。
単なる売買アプリから、顧客のお金を長期間預かる金融プラットフォームへ変わろうとしている。
予測市場の収益が株式取引を超えた
特に成長しているのが「予測市場」だ。
予測市場では、スポーツの勝敗、選挙、経済指標など、現実の出来事について結果を予想する契約を売買する。
Robinhoodでは「イベント契約」と呼ばれている。
2026年第2四半期のイベント契約による収益は、前年同期の10倍を超える1億5,600万ドルに達した。
同じ四半期の収益は、
取引分野
収益
オプション
3億4,200万ドル
イベント契約
1億5,600万ドル
株式
1億2,900万ドル
暗号資産
1億ドル
となっている。
すでに予測市場の収益は、株式取引や暗号資産取引の収益を上回っている。
Robinhoodを「株を売買するアプリ」とだけ考えていると、現在の収益構造を見誤る。
利用者数だけではなく、預かる資産も増えている
2026年第2四半期のRobinhoodは、売上高が前年同期比32%増の13億1,000万ドルとなり、過去最高を記録した。
主な数字は次のとおりだ。
Robinhoodの主な指標
2026年第2四半期
売上高
13億1,000万ドル
売上高の前年同期比
+32%
純利益
5億7,300万ドル
入金済み顧客数
2,840万人
プラットフォーム資産
3,690億ドル
純入金額
217億ドル
Gold会員
480万人
顧客1人当たり売上高
187ドル
顧客数は前年同期比7%増だった。
一方、顧客1人当たり売上高は24%増え、プラットフォーム上の資産は32%増加している。
人数を増やすだけではなく、既存利用者に多くの金融サービスを使ってもらい、預かる資産を増やす方向へ進んでいることが分かる。
それでも値動きの大きい会社である
Robinhoodの収益源は広がっているが、リスクも大きい。
暗号資産価格や株式市場が下落し、個人投資家の売買が減れば、取引関連収益は減少する。
予測市場についても、金融商品と賭博の境界をめぐって規制が変わる可能性がある。
また、第2四半期の純利益5億7,300万ドルには、ファンドの連結除外などに伴う1億2,900万ドルの利益が含まれている。
見かけの利益成長を、そのまま本業の成長と考えるべきではない。
9月3日の上昇率は16.57%。
出来高も通常の約2倍に膨らんだ。
上昇の勢いは強いが、それだけ市場の期待も急速に高まったことになる。
NISA・iDeCoで投資信託を積み立てる人が見るべきこと
Robinhoodは2025年9月にS&P500へ採用された。
そのため、S&P500に連動する投資信託を保有している人は、比率は小さいもののRobinhoodにも投資していることになる。
ここで重要なのは、Robinhood株を追加で買うべきかどうかではない。
S&P500の中身が、少しずつ変化していることだ。
かつてRobinhoodは、ミーム株や暗号資産ブームを象徴する新興企業だった。
現在は黒字化し、S&P500へ入り、銀行、カード、資産運用、予測市場へ事業を広げている。
S&P500は、昔から同じ500社を保有し続ける指数ではない。
成長した企業が入り、力を失った企業が外れる。
投資信託を長期保有するということは、現在の大企業だけでなく、将来の主力企業へ自動的に入れ替わっていく仕組みを保有することでもある。
Robinhoodの急騰は、一日の値動きとして追いかける必要はない。
ただし、「個人のお金が株式だけでなく、暗号資産、予測市場、金融アプリへ流れている」という変化は、長期投資家も知っておく価値がある。
今日のポイント
9月3日の米国市場は、FRBのウォラー理事が金利据え置きの可能性に言及したことで、主要3指数がそろって1%以上上昇した。
一方、ISM非製造業景況指数は強く、仕入価格も高水準だった。
株価は追加利上げへの警戒後退を好感したが、インフレ問題が解決したわけではない。
個別株では、Robinhoodが16.57%上昇。
暗号資産市場の反発と証券会社による評価引き上げに加え、株式売買だけに依存しない事業構造への変化が評価された。
とりわけ予測市場は、第2四半期に株式取引や暗号資産取引を上回る収益を生み出している。
Robinhoodは、株を売る会社から、人々のお金と関心が集まる場所そのものを運営する会社へ変わり始めている。
※本記事は市場動向の解説を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。
主な参照:
Reuters「Wall Street ends sharply higher as Waller remarks ease rate hike fears」
Reuters「Strong demand boosts US services sector activity in August」


