日本では2026年、外国人の入国や在留にかかる費用が大きく変わっている。
なかでも注目されているのが、永住許可の手数料だ。
これまで1万円だった永住許可の手数料が、2026年10月から、
20万円
へ引き上げられる。
実に20倍だ。
ただし、最初に一つ重要なことを確認しておきたい。
20万円は「永住許可を申請するだけでかかるお金」ではない。
永住許可の手数料は、申請時ではなく、審査を経て許可されるときに納付する。
つまり、申請して不許可になった人から20万円を徴収する仕組みではない。
では、永住を認められた外国人が支払う20万円という金額は、本当に高いのだろうか。
外国人が日本に入り、暮らし、永住するまでにかかる「費用」を、海外の制度と比較しながら見てみよう。
日本は2026年、外国人関連の費用を相次いで引き上げた
永住だけが値上げされたわけではない。
日本では2026年、外国人の入国・在留に関係する費用の見直しが相次いでいる。
査証(ビザ)については、2026年7月から手数料が大幅に引き上げられた。
さらに10月からは、在留資格変更や在留期間更新、永住許可などの手数料も引き上げられる。
外国人が日本に入国し、長期間生活する際の行政手数料は、これまでとはかなり違った水準になってきた。
在留資格の変更・更新は最大7万5,000円へ
2026年10月から、在留資格変更や在留期間更新の手数料は、許可される在留期間などによって段階的に設定される。
窓口で手続きする場合、
3か月以下:1万円
1年:3万3,000円
3年以上5年未満:6万4,000円
5年以上:7万5,000円
などとなる。
そして永住許可は、
1万円 → 20万円
となる。
ここでも重要なのは、在留資格変更や更新、永住許可の手数料は、基本的に許可されたときに納付するものだという点だ。
現在の制度でも、入管庁は在留手続きの手数料について「許可又は交付時」に納付する仕組みとしている。
なぜ永住許可は20万円なのか
では、20万円という金額はどのように決められたのだろうか。
政府の説明を見ると、単純に、
「永住審査に20万円かかるから」
という話ではない。
永住許可にかかる審査などの実費として算定されたのは、
約2万円。
残りの、
約18万円
については、永住者が許可後も出入国・在留管理行政から継続的に利益を受けるという「応益的要素」を考慮したものだ。
永住許可後の平均在留期間13.5年などをもとに算出されている。
つまり、
審査などの実費:約2万円
+
応益的要素:約18万円
=
20万円
という考え方になる。
さらに政府は、諸外国における同種の手数料も参考にしている。
ここまで見ると、20万円は単なる「審査料金」というより、
永住者として長期間日本で暮らすことを前提にした行政コストの負担
という意味合いが強いことが分かる。
永住20万円は世界的に高いのか
では、海外と比べてみよう。
出入国在留管理庁が示した諸外国の永住・定住に関する費用の比較では、次のようになっている。
🇯🇵 日本 20万円
🇨🇦 カナダ 約17万円
🇩🇪 ドイツ 約2万4,000円
🇫🇷 フランス 約4万2,000円
🇰🇷 韓国 約2万円
🇬🇧 英国 約62万9,000円
※各国で制度、対象者、取得条件などが異なるため、完全な横並び比較ではない。金額は出入国在留管理庁が比較のために示した円換算額を使用。
こうして見ると、日本の20万円は決して安くない。
ドイツ、フランス、韓国と比べれば、かなり高い。
一方で、カナダとは比較的近く、英国では日本の3倍を超える金額となっている。
したがって、
「日本の20万円は世界でも突出して高い」
とも、
「海外に比べれば安い」
とも一概には言えない。
永住者本人にどの程度の費用負担を求めるかについて、国によってかなり大きな違いがある。
観光客と永住者を同じ「外国人」で考えてはいけない
外国人に関する費用を見るとき、もう一つ重要なのが滞在目的の違いだ。
例えば、
観光・短期商用で一時的に日本へ来る人
日本で働く人
日本で会社を経営する人
家族とともに生活する人
長期間日本で暮らし、永住を希望する人
では、適用される制度が全く違う。
観光や短期商用で来日する人と、何年も日本で生活し、永住を希望する人を、単純に「外国人」という一つのカテゴリーで考えることはできない。
日本で長期間生活する外国人には、在留資格の変更や更新などの手続きが発生する。
さらに永住を希望し、それが認められれば20万円の永住許可手数料を支払う。
滞在目的と期間によって、必要となる手続きも負担する費用も大きく変わる。
日本から出国するときにも3,000円
入国や在留だけでなく、出国にも費用がかかる。
2026年7月から国際観光旅客税は、
1回3,000円
となった。
名称に「観光」と付いているため、外国人観光客だけを対象とした税金のようにも見えるが、実際には違う。
観光、ビジネス、就業、留学、医療など目的を問わず、日本から航空機や船舶で出国する旅客が原則として対象になる。
つまり、
日本人が海外旅行へ行く場合も原則3,000円
を負担する。
帰化申請は手数料0円
一方、興味深いのが帰化だ。
日本国籍を取得するための帰化許可申請について、法務省は、
「手数料はかかりません」
としている。
ただし、戸籍や各種証明書の取得、翻訳など、申請に必要な書類を準備するための実費が発生する場合はある。
あくまで、
国に支払う帰化許可申請の手数料が0円
という意味だ。
難民制度は通常の移民制度とは分けて考える
もう一つ、通常の在留・永住制度とは切り分けて考える必要があるのが難民認定制度だ。
日本の難民認定申請には手数料がかからない。
しかし、
「永住は20万円なのに、難民申請なら0円」
と単純比較するのは適切ではない。
そもそも両者は制度の目的が違う。
永住許可は、日本で継続的に生活する外国人に対する在留制度だ。
一方の難民認定制度は、難民条約などに基づき、迫害を受けるおそれがある人を人道上保護するための制度である。
また、
難民認定を申請しただけで、自動的に日本で自由に働けるわけでもない。
そのため、難民制度については「外国人が日本で暮らすために支払う通常の行政費用」の比較からは切り分けて考える必要がある。
「外国人」という一言では費用の実態は分からない
今回の制度変更を見るうえで重要なのは、外国人を一括りにしないことだ。
観光で数日間日本を訪れる人。
仕事のために数年間暮らす人。
日本で事業を経営する人。
家族とともに生活する人。
そして、長年日本で生活した末に永住を希望する人。
同じ「外国人」でも、日本に滞在する目的も期間も全く違う。
当然、適用される制度も支払う費用も違う。
だからこそ、
「外国人はいくら払っているのか」
という問いだけではなく、
「どのような目的で、どのくらい日本に滞在する人なのか」
まで分けて考える必要がある。
永住20万円は高いのか
1万円から20万円。
20倍という数字だけを見ると、今回の引き上げは非常に大きい。
実際、ドイツやフランス、韓国と比較すれば、日本の20万円はかなり高い。
しかし英国では約62万9,000円と、日本の3倍を超える費用が設定されている。
カナダは約17万円で、日本の新しい水準に比較的近い。
そして日本政府も今回、単なる審査実費だけではなく、永住許可後の行政サービスから受ける利益や平均在留期間、諸外国の料金水準まで考慮して20万円という金額を設定している。
永住許可20万円は高いのか。
その答えは、どの国と比べるかによって変わる。
ただ一つ確かなのは、2026年を境に、日本でも外国人の入国・在留・永住にかかる費用負担の考え方が、大きく変わり始めているということだ。


