ニュースを見ていると、「半導体」という言葉を毎日のように目にする。
NVIDIA、TSMC、ラピダス、キオクシア。AI、自動運転、スマートフォン、データセンター。米中対立でも、半導体は重要なテーマになっている。
では、そもそも半導体とは何なのか。
CPUやGPUとは何が違うのか。メモリーも半導体なのか。なぜ台湾や日本、中国、アメリカが巨額の資金を投じているのか。
半導体をめぐるニュースを理解するために、まずその正体から整理してみる。
半導体とは何か
半導体は、電気を通す「導体」と、ほとんど通さない「絶縁体」の中間的な性質を持つ物質だ。
銅やアルミニウムは電気をよく通す。ゴムやガラスはほとんど通さない。
半導体はその中間にあり、条件によって電気を通したり、通しにくくしたりできる。
代表的な材料がシリコンだ。
この性質を利用すると、電気の流れを極めて細かく制御できる。
コンピューターが扱う「0」と「1」も、この電気のONとOFFによって表現されている。
コンピューターの原点は「スイッチ」
現在のコンピューターは複雑な計算を一瞬でこなすが、基本動作は意外なほど単純だ。
電気が流れているか、流れていないか。
ONかOFFか。
これを「1」と「0」に置き換え、膨大な数の組み合わせによって計算や記憶を行っている。
そのONとOFFを高速で切り替える部品が「トランジスタ」だ。
現在の高性能半導体には、数百億個規模のトランジスタが詰め込まれている。
昔は真空管だった
トランジスタが登場する以前、コンピューターでは真空管が使われていた。
真空管も電気の流れを制御できるが、大きく、熱を持ち、消費電力も大きい。
初期のコンピューターが部屋いっぱいの巨大な機械だった理由の一つがこれだ。
1947年、ベル研究所でトランジスタが発明された。
真空管よりはるかに小さく、壊れにくく、消費電力も少ない。
コンピューターの小型化はここから急速に進んでいく。
なぜ「半」導体なのか
シリコンそのものは、銅のように電気をよく通す物質ではない。
そこで、シリコンにごく微量の別の元素を加える。
これを「ドーピング」という。
加える元素によって電子が余りやすい「n型半導体」と、電子が不足した状態を作る「p型半導体」を作ることができる。
このp型とn型を組み合わせることで、電気を一方向に流したり、ONとOFFを切り替えたりできる。
トランジスタは、この性質を利用して作られている。
つまり半導体は、単に「電気を少し通す物質」ではない。
電気の流れ方を設計できる材料だ。
トランジスタを大量に並べたものがIC
一つのトランジスタだけでは、できることは限られている。
そこで大量のトランジスタや抵抗などを一枚の小さな基板上にまとめる技術が生まれた。
これがIC(Integrated Circuit=集積回路)だ。
さらに集積度が上がり、一つのチップに膨大な数のトランジスタを載せられるようになった。
現在のCPUやGPU、メモリーも、この延長線上にある。
CPUとは何か
CPUは「Central Processing Unit」、日本語では中央演算処理装置。
コンピューター全体の処理を担う中心的な部品だ。
人間にたとえるなら、司令官に近い。
アプリを起動する。
数字を計算する。
データを読み込む。
キーボードからの入力を処理する。
ほかの部品に指示を出す。
こうしたさまざまな処理を順番にこなしていく。
CPUも巨大な半導体チップの一種だ。
GPUとは何か
GPUは「Graphics Processing Unit」。
もともとは画像処理のために発達した。
CPUが複雑な仕事を順番に処理するのが得意なのに対し、GPUは比較的単純な計算を大量に同時処理するのが得意だ。
CPUが司令官なら、GPUは大量の計算を一斉にこなす部隊に近い。
この特徴がAIと非常に相性が良かった。
生成AIでは膨大な行列計算を繰り返すため、GPUの並列処理能力が威力を発揮する。
NVIDIAがAIブームの中心企業になった大きな理由でもある。
メモリーも半導体
コンピューターには、計算するだけでなくデータを一時的に置いたり、保存したりする仕組みも必要になる。
代表的なのがDRAMとNAND型フラッシュメモリーだ。
DRAMは、CPUやGPUが作業中のデータを一時的に置く場所。
CPUを「仕事をする人」と考えるなら、DRAMは「作業机」に近い。
机が広ければ、多くの資料を広げながら作業できる。
ただし、電源を切るとデータは消える。
一方、NAND型フラッシュメモリーは、電源を切ってもデータが残る。
スマートフォンのストレージやSSD、USBメモリーなどに使われている。
こちらは「本棚」や「倉庫」に近い。
CPU、GPU、DRAM、NAND。
役割は違うが、いずれも半導体技術によって作られている。
半導体はどうやって作るのか
半導体チップの土台として広く使われているのがシリコンだ。
シリコンは地球上に非常に多く存在する元素で、砂や石にも含まれている。
ただし、半導体に使うには極めて高い純度が必要になる。
高純度のシリコンから円柱状の結晶を作り、それを薄くスライスする。
この薄い円盤が「ウェハー」だ。
ウェハーの表面に、光や薬品などを使って微細な回路を何層にも形成していく。
一枚のウェハーには多数のチップが作られ、最後に切り分けられる。
ニュースでよく聞く「○ナノ半導体」という言葉も、この微細化技術に関係している。
回路をより小さく作ることで、一つのチップにより多くのトランジスタを詰め込み、高性能化や省電力化を進めてきた。
シリコンだけでは作れない
半導体の中心材料はシリコンだが、実際の製造には多くの材料が使われる。
配線には銅などの金属が必要になる。
製造工程では特殊なガスや薬品も使う。
高性能な半導体や電子部品では、ガリウム、ゲルマニウムなどの希少金属も重要になる。
半導体産業は、設計や製造装置だけで成立しているわけではない。
原料の採掘、精製、素材、化学品、製造装置、ウェハー加工、チップ製造、組み立てまで、巨大なサプライチェーンによって支えられている。
そのため、ある国が特定の原料や工程で大きなシェアを握ると、半導体産業全体に影響を与えることがある。
半導体が止まると、社会も止まる
半導体はスマートフォンやパソコンだけに使われているわけではない。
自動車、家電、通信設備、工場、医療機器、データセンター、AI、防衛装備まで、現代社会のあらゆる場所に入っている。
半導体が不足すれば、自動車や家電の生産まで止まる。
各国が巨額の補助金を投じて工場を誘致し、アメリカと中国が輸出規制をめぐって争い、台湾の半導体産業が世界的に注目される理由もここにある。
半導体は、単なる「パソコンの部品」ではない。
現代社会を動かす基盤技術の一つになっている。
そして半導体を追っていくと、次に出てくるのが「材料」の問題だ。
シリコン以外にも、多くの金属や希少資源が必要になる。
誰が掘っているのか。
誰が精製しているのか。
なぜ中国が強いのか。
輸出が止まると何が起きるのか。
Vol.2では、半導体を支えるレアメタルと資源を見ていく。
半導体に出てくる元素を、実物で見る
シリコン、銅、タングステン、チタン、ニッケル——。
記事で名前だけ見ているとピンとこないが、元素を小さなキューブにしたものも売られている。
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