9月18日、第2次高市改造内閣の副大臣・大臣政務官人事が決まった。
今井絵理子参院議員は内閣府副大臣、生稲晃子参院議員は外務大臣政務官、森下千里衆院議員は農林水産大臣政務官に就任した。
3人はいずれも芸能界で知名度を得た後に政治家になった。
だから問題なのではない。
見るべきなのは、政治家になってから何を積み上げ、その実績が政府ポストを任せるところまで来ているのかだ。
今井絵理子は国会議員10年
今井絵理子は2016年に参院比例で初当選し、2022年に再選。現在2期目で、これまで内閣府大臣政務官を2度経験している。今回、初めて副大臣に上がった。参院では内閣委員会理事、沖縄・北方問題及び地方に関する特別委員会理事などを務めてきた。
10年間何もしてこなかった議員ではない。
特に力を入れてきたのが、手話、聴覚障害、障害児支援、情報保障だ。
長男の聴覚障害を公表し、国会議員になる以前から「みんなの手話」などに関わってきた。議員になった後も、この分野を継続して扱っている。
もう一つの大きなテーマが沖縄だ。今井自身が沖縄県那覇市出身で、沖縄振興や沖縄・北方問題にも長く関わってきた。
障害者政策も沖縄政策も、当然ながら国政の重要なテーマである。
ただ、今井の代表的な政治活動を振り返ると、自分の家族が直面した問題と、自分の故郷に関係する問題が大きな柱になっている。
それだけに、内閣府副大臣への昇格には疑問が残る。
全国比例で選ばれた国会議員であり、今回は一議員でも政務官でもない。副大臣である。
自身や家族、故郷に近いテーマだけでなく、そこから離れた国政でも政策を組み立て、行政を動かせるだけの幅を、これまで十分に示してきただろうか。
今井は近年、経済安全保障やサイバーセキュリティーなどにも質問分野を広げている。ただ、障害者政策で見せてきたような継続した実績が、そうした幅広い分野でも積み上がっているとはまだ言いにくい。
副大臣になるのは、その後でも遅くなかったのではないか。
生稲晃子はまだ参院1期目
生稲晃子は2022年の参院選で初当選。現在も当選1回である。
今回が初めての外務政務官ではない。2024年11月から第2次石破内閣で外務大臣政務官を務め、2025年10月まで在任した。
その間、外国政府関係者との会談や海外訪問、国際会議への出席など、政務官としての外交実務を経験している。
だから「外交経験ゼロの新人を突然起用した」という話ではない。
それでも、政治家としてはまだ1期目だ。
一度政務官を経験した後、国会や党でどんな外交政策を積み上げたのか。そこをもう少し見た上で再び政府ポストに就けてもよかったのではないか。
森下千里は政治家になってまだ約2年
森下千里は2024年の衆院選で初当選し、2026年2月の衆院選で再選した。
2025年には環境大臣政務官に就任し、今回は農林水産大臣政務官へ移る。
国会議員になってまだ約2年で、すでに2つ目の政務官ポストである。
環境と農林水産には政策上のつながりもある。ただ、政治家として政策を積み上げる時間そのものが短い。
政府ポストを与えながら経験を積ませている途中、と見る方が自然な経歴でもある。
高市政権は何を評価したのか
3人の経歴を並べると、今井は政務官を重ねて副大臣へ、生稲は外務政務官に再登板、森下は環境政務官から農水政務官へ進んでいる。
高市首相は今回の人事について、当選回数だけでなく、専門知識や課題意識、やる気、実行力を重視したと説明している。
年功序列だけで人事を決める必要はない。
ならば、当選回数を飛び越えて登用する人物については、なぜ今、このポストなのかがもっと見える必要がある。
今井には10年の政治経験がある。ただ、代表的な政策活動は自身や家族、故郷に近い分野に偏ってきた。
生稲はまだ参院1期目。
森下は国会議員になって約2年だ。
有権者が3人を国会議員に選んだことと、副大臣や政務官に登用することは同じではない。
今回の3人については、政府ポストを重ねる前に、国会議員としてもう少し政策実績を積む時間があってもよかったのではないか。
今井絵理子は、私事に近い問題から離れて国政全体を見られるのか。生稲晃子と森下千里は、政府ポストを任せるだけの実績をすでに積んでいるのか。
3人の登用は、時期尚早ではなかったのか。
追記(9月19日)
就任後、今井絵理子氏は自身の担当について、「沖縄をはじめ、こども政策、障がい者政策など」と明らかにした。
故郷・沖縄、そして聴覚障害のある長男を育てた経験とも深くつながる障害者政策。いずれも今井氏がこれまで政治活動の中心に置いてきたテーマである。
つまり今回の副大臣人事では、これまでの専門分野から離れて新たな国政課題を担わせるのではなく、本人が長年取り組んできた分野を、そのまま副大臣として担当させる形になった。
専門性を生かす人事という見方はできる。
一方で、本稿で指摘した「自身や家族、故郷に近いテーマから離れたときにも、日本全体を見渡して政策を動かせるのか」という疑問については、今回の担当ではまだ答えは出ない。
むしろ今井氏は、これまで取り組んできた政策の延長線上で、副大臣という一段上の権限と責任を持つことになる。
その実績が、副大臣への登用に見合うものだったのか。今回の人事が時期尚早ではなかったのか。今後は、これまで以上に具体的な成果で問われることになる。


