ウガンダの首都カンパラで、道路工事を視察していた市長が排水設備のコンクリートに手を伸ばした。
指で触ると、崩れた。
市長はその場で施工業者を問いただし、問題部分の撤去と再施工を命じた。
施工していたのは中国のChina Railway 18th Bureau Group(中国鉄建十八局集団)。8.1キロのSalaama Roadを含む道路改修の一部だった。
住民は以前から排水工事に不満を訴えていた。市長のRonald Balimwezoは土木工学を学んだエンジニアでもある。業者はその後、該当部分を撤去して施工し直した。
資金を出しているのはアフリカ開発銀行(AfDB)だ。中国の融資ではない。中国企業が、国際機関の金でアフリカの公共工事を取っている。
映像で見えたのは、手で崩れるコンクリートだった。
見えないところはどうなっているのか。道路の下には何センチの材料が入り、設計書どおりの厚さで造られているのか。
ウガンダを追うと、「材料が悪かった」では終わらない話が出てくる。路盤が仕様を下回った道路。弱い路盤を残した施工。舗装構造を810ミリから550ミリへ変える案。
道路は、見えている面だけではない
道路は、ざっとこう積み上がる。
地盤
下層路盤(sub-base)
上層路盤(base)
アスファルト表層
車が走るのは一番上だ。その下に何センチ入り、何を使ったか。完成写真には写らない。
三つの層が薄かったとの告発
中国企業Chongqing International Construction Corporation(CICO)が施工した道路では、最初の約30キロについて、下層路盤、上層路盤、表層が薄かったとの告発が出ている。
同じ案件では、工事数量表(Bill of Quantities)の水増し、道路公社UNRA職員との癒着、契約発注の問題も告発され、政府機関が調査対象とした。UNRAは当時、職員を処分・起訴できる証拠は提示されていないと回答している。
問題になったのは、完成した道路の見た目ではない。数量表に書かれた道路と、地面に造られた道路が同じかどうかだった。
監査が見ていたのは、穴の下だった
Olwiyo–Pakwach Roadでは、監査が砕石路盤が設計仕様を下回っていたと指摘した。すでにポットホールや大きな轍があり、広く傷んでいる区間もあった。
Fort Portal–Hima Roadでも、弱い路盤が複数区間で確認された。施工はCICOだった。
表面の穴は誰にでも見える。監査が見ていたのは、その下だった。
Fort Portal–Hima Roadは、掘って調べた
この道路は、完成後およそ1年で穴が開き始めた。調査で掘削された。
調査委員会では、古く弱い路盤を残したまま新しい材料を載せたこと、使用材料が仕様を下回っていたことが問題になった。CICO側は、道路設計と大型車交通が損傷の原因だと反論した。
古い路面を剥がし、弱い路盤を処理し、規定の厚さで新しい路盤を入れ、必要な材料を使う。
弱い路盤を残して上から載せれば、工程も材料も変わる。
完成直後は、それでも道路に見える。
810ミリを550ミリへ
より直接的な数字が残っている。
中国交通建設(China Communications Construction Company=CCCC)が受注したMasindi–Tangi Junction–Paraa–Buliisa道路。全長159キロ。中国輸出入銀行の融資を使った大型事業だった。
CCCCは2018年8月、舗装構造全体の厚さを810ミリから550ミリへ変える案を出した。
260ミリ減。
約32%薄い。
同年10月、UNRAの道路・橋梁開発責任者はこの案を拒否した。南アフリカの舗装工学マニュアルでは、この区分の道路に最低800ミリが推奨され、550ミリでは交通荷重に足りない、という判断だった。
別のUNRA幹部も反対していた。
当初の交通荷重想定は34.84 million equivalent standard axles。CCCC側の分析は6.8 million。
約5分の1。
UNRAは、そこまで低く見る根拠が不足しているとして、従来予測を使うよう求めた。
その後、UNRAがT6の舗装構造を認めたと現地メディアは報じている。
260ミリで、4000万ドル
現地メディアが確認した大統領向け説明資料では、舗装構造の変更で施工会社側が節約できる額は約4000万ドル。当時の換算で約1440億ウガンダシリングと試算されていた。
同資料は、構造を変えても工事費がそれに応じて変わっていないことも問題視している。
260ミリ。
約32%。
試算約4000万ドル。
道路の下の厚さが、どれほどの金額になるかが見える。
UNRAとCCCCは否定した
UNRAは2021年の取材で、厚さは変更しておらず契約どおり施工していると説明した。
CCCCも、単純に薄くしたのではないと主張する。アスファルトコンクリートや路床を厚くしたため、むしろ強くなり、コストは約700万ドル増えたという。
一部区間の亀裂は認めつつ、新旧接合部の沈下が原因で、補強材を足したとしている。
残るのは、完成した道路が実際に何ミリだったかだ。
公開されている完成検査から、その実測値までは確認できなかった。
だから、810ミリから550ミリへ実際に削ったとは、まだ書けない。
残っているのは変更案と、節約額の試算と、双方の反論である。
数量表には「90万ドルの車」
同じ道路の数量表には、別の問題も出ている。
大統領向け資料では、現場用車両が1台あたり90万ドルと書かれていた。UNRAは誤りを認め、change orderで90万ドルから9万ドルへ直した。
10分の1。
CCCC側は、監督側へ11台を約50万ドルで買い、3年分の燃料・整備・運転手などで約70万ドルが必要だったと説明する。
同じ資料では、必要性を疑問視された橋2本に各200万ドル、計400万ドルが数量表に入っていたとの指摘も出た。
CCCCは、道路には橋が7本あり、橋梁全体で約3500万ドルかかると反論している。
地面の厚さだけでは足りない。
数量表に何が入り、いくら付いているかまで見る必要がある。
100ミリが60ミリでも、上からは道路に見える
厚さが何を意味するかは、中国企業案件ではないウガンダ監査院の実測が分かりやすい。
仕様は砂利層100ミリ。
実測60ミリの地点があった。
40%薄い。
別地点は83ミリ。
監査院は、規定厚を満たさなければ耐用年数が短くなると書いた。
100ミリでも60ミリでも、上から見れば道路だ。
同じ幅、同じ長さなら、その層の材料量は単純計算で4割違う。
完成式の日には分からない。
車が走り、大型車が通り、雨が入り、荷重が乗る。
時間がたってから、差が表面へ出る。
手で崩れたコンクリートの、その下へ
Salaama Roadでは、市長が触ったコンクリートが崩れた。
目の前だったから、分かりやすかった。
道路の手抜きは、いつもあの形では見えない。
三層が薄かったとの告発。
設計を下回った砕石路盤。
弱い路盤を残した施工。
100ミリの仕様に対する60ミリの実測。
CCCCが出した、810ミリから550ミリへの変更案。
差は260ミリ。大統領向け資料の節約試算は約4000万ドル。
完成したその道路が最終的に何ミリだったかの実測は、公開資料から確認できなかった。
見るべき場所は分かった。
設計書。工事数量表。材料試験。地面を掘って測った数字。
道路は完成した瞬間にはきれいに見える。
削ったものは、アスファルトの下に隠れる。
OAKS DAILYでは、完成写真より先に、設計書と数量表、そして掘った記録を追う。


