入管庁、不法就労摘発を「通報待ち」中心から転換へ 解体業者への合同立ち入り、見つかった外国人はその後どうなる?

出入国在留管理庁が、不法就労の摘発方法を大きく変えようとしている。

これまでは、通報などによって不法就労の疑いが判明してから入管が調査するケースが中心だった。

今秋からは、他省庁が通常行っている立ち入り調査に、入管職員が同行する。

第一弾として、国土交通省が10月にも行う解体業者への調査に参加し、現場にいる外国人の在留カードをその場で確認する方針だ。環境省とは、自動車や金属くずなどを扱う「ヤード」への合同立ち入りも協議している。

今回の変更は、摘発件数を増やすだけではない。

「疑いが出てから調べる」方式から、「通常の業界検査そのものを、不法就労発見の入口にする」方式への転換である。

なぜ最初が解体業なのか

2025年に退去強制手続や出国命令手続を受けた外国人は1万8,442人。このうち不法就労が確認されたのは1万3,435人、全体の72.9%だった。

職種別では農業従事者が5,227人で最多。次いで建設作業者が4,011人で、不法就労者全体の約3割を占める。農業と建設の2業種だけで68.8%に達している。

特に目立つのが埼玉県だ。

同県で不法就労が確認された1,366人のうち、建設作業者は826人。約60.5%を占める。

もちろん、建設作業者イコール解体業者ではない。

それでも、建設・解体系が重点分野になる背景の一端は、この数字から見えてくる。

「調査します」と発表したら、逃げられないのか

ここで一つ疑問がある。

10月から解体業を重点的に調べると先に公表すれば、悪質な会社は外国人労働者を隠してしまうのではないか。

その可能性はある。

ただし、解体工事には行政側が現場を把握しやすい仕組みも存在する。

建設リサイクル法の対象工事では、発注者や自主施工者が工事着手の7日前までに、分別解体などの計画を行政へ届け出なければならない。

つまり行政は、対象となる工事が「いつ、どこで行われるのか」を事前に把握できる。

国交省などは以前から全国一斉パトロールも実施している。

2025年度に公表された前年実績では、全国4,961現場に立ち入りを行った。

東京都でも2026年6月、届出が必要な工事2,647件のうち564件に立ち入りを実施した。

しかも東京都は、このパトロールについて明確に「抜き打ち」としている。

つまり、

行政が持つ解体工事の情報
+
抜き打ちの現場パトロール
+
入管職員による在留資格確認

という組み合わせが可能になる。

ただし、今回始まる「入管同行型」の調査自体が必ず抜き打ちになるのか、全国でどの程度実施されるのか、年間何回行われるのかは、現時点では明らかになっていない。

ここは今後の実効性を見るポイントだ。

入管職員が同行すると何が変わるのか

これまで国交省や自治体の職員が解体現場へ入っても、そこで働く外国人の在留資格や在留期限まで入管行政として確認することはできなかった。

そこへ入管職員が同行する。

外国人が持つ在留カードを確認し、在留資格や在留期限、就労可能な資格なのかをその場で調べる。

資格なく働いている外国人が確認されれば、入管への出頭を求め、その後の調査につなげる。

では、そこで不法就労が見つかった外国人はどうなるのか。

捕まったら、すぐ強制送還されるわけではない

不法就労が発覚したからといって、その場から空港へ連れて行かれ、即日強制送還されるわけではない。

不法残留などの場合には、違反調査や退去強制事由の認定など、入管法に基づく手続を経る。

直ちに送還できないケースでは、収容ではなく一定条件の下で「監理措置」に付される場合もある。

また、不法就労といっても中身は一つではない。

在留期限が切れたまま働いていたのか。

在留資格はあるが、許可された範囲を超えて働いていたのか。

本来の在留活動をほとんど行わず、資格外の仕事を中心にしていたのか。

ケースによって刑事罰や退去強制の扱いも変わる。

不法残留などは、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性がある。

一方、本来の在留活動を続けながら許可なく資格外活動をした場合は、1年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金、あるいは併科の対象となる。資格外活動を「専ら」行っていると認められる重大なケースでは、より重い規定が適用される。

ただし、「摘発されたらその場で300万円を払う」という制度ではない。

これはあくまで法定刑の上限であり、交通反則金のように現場で徴収されるものではない。刑事処分を科す場合には、別途刑事手続が必要になる。

実際には「自費で帰国」が多い

「強制送還」という言葉から、国が航空券を購入し、護送官を付けて外国人を送り返す姿を想像する人もいるかもしれない。

しかし実態はかなり違う。

2025年に退去強制令書によって送還された外国人は7,563人。

このうち6,677人、88.3%は、航空券などの送還費用を本人が負担する「自費出国」だった。

護送官付きの国費送還は318人だった。

さらに、比較的簡易な「出国命令制度」によって出国した外国人も9,789人いる。

退去強制令書による送還と出国命令による出国を合わせると、2025年中の出国者は1万7,352人となる。

ただし、この1万7,352人は、その年に退去強制手続などを受けた1万8,442人をそのまま追跡した数字ではない。前年から手続が続いていた人なども含まれるため、単純に割合を計算することはできない。

退去後もペナルティは続く

国外へ出れば、それですべて終わるわけでもない。

退去強制された場合、日本への上陸拒否期間は原則5年間。

過去にも退去強制されたことがある場合などは10年間となる。

一方、自ら出頭するなど一定条件を満たして「出国命令制度」で出国した場合は、原則1年間に短縮される。

つまり日本の制度は、

摘発
↓
違反調査
↓
退去手続
↓
出国
↓
一定期間の再入国禁止

まで続いている。

雇った会社側の罰則もさらに重くなる

政府が強化しているのは、外国人本人への対応だけではない。

不法就労させる企業側への罰則も重くなる。

外国人に不法就労させたり、不法就労を目的として支配下に置いたり、あっせんしたりする「不法就労助長罪」は、現在の「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」から、「5年以下または500万円以下」へ引き上げられる。併科も可能だ。

2027年4月から施行される予定で、不法就労を「使う側」に対する責任も明確に重くなる。

対策は、「外国人を見つける」だけではなく、「不法就労を利用する事業者を減らす」方向へ進んでいる。

摘発を増やすなら、「見つけた後」も問われる

他省庁の業界検査に入管職員を同行させる今回の方式は、不法就労対策として一歩前進だ。

行政がすでに持っている現場情報と立ち入り制度を利用できるため、ゼロから摘発先を探すより効率はいい。

一方で、重点業種や実施時期が知られている以上、単発調査だけなら悪質な事業者が一時的に人員を移す余地は残る。

抜き打ちだけでなく、再調査、雇用記録との照合、雇用主への処分まで継続的に行えるかが重要になる。

そして、もう一つ考えるべきことがある。

摘発件数を増やせば、その後に行う違反調査や退去手続も増える。

本人が不法残留や不法就労の事実を争わず、送還上の問題もないケースまで、長い手続を必要とするのか。

日本にはすでに出国命令という簡易な制度もある。

摘発を強化するのであれば、次に問われるのは、

「見つけた後、いかに迅速かつ適正に処理するか」

ではないだろうか。

不法就労対策は、見つけるところで終わらない。

摘発、処分、出国、再入国制限、そして雇用主への責任追及まで含めて、初めて一つの制度として機能する。

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