日本で相次ぐベトナム人の犯罪・法令違反――ベトナム政府も対策を強化

日本で相次ぐベトナム人の犯罪・法令違反――ベトナム政府も対策を強化

日本で暮らすベトナム人が増えるなか、ベトナム人による犯罪や法令違反がニュースになる機会も増えている。

窃盗、不法残留、不法就労。

さらにSNSでは、立入禁止区域での釣りや、貝類などの採取をめぐる動画が大きく拡散されることもある。

こうしたニュースを見ていると、一つの疑問が浮かぶ。

日本で起きている問題を、ベトナム側は知っているのだろうか。

ベトナムの現地メディアや政府の資料まで調べてみると、少なくとも「日本だけで問題になっている」という状況ではなかった。

日本で起きたベトナム人による事件はベトナム国内でも報道され、国会でも日本での法令違反について議論されている。

在日ベトナム大使館も、自国民に日本の法律やルールを守るよう注意喚起している。

そして2026年、ベトナム政府は海外就労をめぐる罰則を強化した。

対象は労働者本人だけではない。

海外就労をめぐる無資格の募集や金銭徴収、違法残留への勧誘などを行う仲介業者にも罰則が設けられている。

日本で起きている問題に対して、送り出す側のベトナム政府も動いている。

■ 日本で検挙されるベトナム人は、来日外国人で最多

まず、日本側の状況を確認しておきたい。

警察庁の2025年統計によると、「来日外国人」の総検挙人員は1万2,777人だった。

そのうちベトナム人は、

4,167人

で、全体の

32.6%

を占め、国籍・地域別で最多だった。

ただし、ここで注意したいのが「来日外国人」という言葉だ。

これは警察庁が犯罪統計で使用している区分であり、日本に暮らすすべての外国人を意味するものではない。

また、検挙人員の多さだけを見て、在日ベトナム人全体の性質として語ることも適切ではない。

この記事で確認したいのは別のことだ。

日本で起きているこうした問題を、ベトナム側はどこまで認識しているのか。

■ 日本で起きた事件は、ベトナム国内でも報道されている

調べてみると、日本で起きたベトナム人による事件は、ベトナムの主要メディアでも報道されている。

窃盗、薬物事件、逮捕、不法滞在など、日本国内で報じられた事件がベトナム語でも伝えられている。

2026年には、日本の刑務所で服役するベトナム人について、その犯罪に至った経緯や日本での生活まで紹介する報道も出ている。

つまり、

日本で事件が起きる
↓
日本国内で報道される
↓
ベトナム国内にも伝えられる

という情報の流れが存在する。

「日本人だけがこの問題を知っている」という状況ではない。

■ ベトナム国内では政策レベルの問題にもなっている

さらに重要なのは、単なる事件報道で終わっていないことだ。

2026年7月、ベトナムでは海外で働く自国民をめぐる制度について議論が行われ、その中で日本で働くベトナム人による法令違反も問題として取り上げられた。

日本はベトナム人にとって最大級の海外就労先である。

そのため、送り出す人数を増やすだけではなく、

失踪
法令違反
出国前教育
送り出す人材の質
海外での行動規範

などもベトナム側の政策課題になっている。

これは大きな変化だ。

日本で起きているベトナム人の法令違反が、ベトナム国内でも政策として議論される段階に入っている。

■ 釣りや立入禁止区域についても大使館が注意喚起

日本のSNSで目立つのが、釣りや海岸での採取をめぐる問題だ。

立入禁止区域への侵入や、貝類などの採取をめぐる動画が拡散され、大きな批判につながることもある。

こうした問題についても、ベトナム側が何もしていないわけではない。

在日ベトナム大使館は、日本で暮らすベトナム人などに対して、釣りや海岸での活動について日本の法律や現地のルールを守るよう注意を呼びかけている。

立入禁止区域へ入らないこと。

警告表示に従うこと。

現地当局の安全規則を守ること。

日本の法律を守ること。

日本で生活する以上、日本の法律と地域のルールに従う必要があることを、ベトナム側からも伝えている。

■ なぜ失踪や不法就労が起きるのか

では、なぜ日本で働くベトナム人の失踪や不法就労が繰り返されるのだろうか。

その背景を調べると、日本へ来る前の段階にも問題があることが見えてくる。

OECDが日本政府の調査をもとに整理したデータでは、ベトナム人技能実習生が来日前に支払った費用は平均5,023ドル。

さらに80%が借金を抱えて来日しており、平均債務額は4,924ドルだった。

日本へ到着した時点で、すでに大きな返済義務を背負っている人が少なくない。

そこに、

想定より低い手取り
仕事内容のミスマッチ
職場でのトラブル
失業
職場からの離脱

などが重なれば、生活は急速に不安定になる。

もちろん、

「借金をして日本へ来たから犯罪を犯す」

という話ではない。

大多数のベトナム人は日本の法律を守って生活している。

しかし、

高額な費用を払って来日
↓
借金返済を抱える
↓
仕事や収入が想定と違う
↓
職場を離れる
↓
正規の就労ルートから外れる

という状況が生まれれば、失踪や不法就労に流れるリスクは高くなる。

さらに、その状況につけ込む存在がいる。

悪質なブローカーだ。

■ 問題は「送り出した後」だけではない

外国人労働者が日本へ来るまでには、いくつもの人や組織が介在する。

本人から始まり、

現地の仲介者
送出機関
日本側の監理・支援機関
受入れ企業

へとつながっていく。

この過程で高額な手数料が発生したり、十分な情報を持たないまま日本行きを決めたりするケースが問題視されてきた。

さらに日本で正規の就労ルートから外れた人に、不法就労などを持ちかけるブローカーが接触する問題もある。

つまり、

本人だけを取り締まれば解決する問題ではない。

送り出す入口と、日本で正規の就労から外れた後の両方に、仲介者の問題が存在する。

■ そしてベトナム政府が新たな罰則を導入

こうした中、ベトナム政府は2026年7月15日、

政令283/2026/NĐ-CP

を公布した。

施行は2026年9月10日。

政令は、労働、社会保険、そして契約に基づいて海外で働くベトナム人労働者に関する行政違反への処罰を定めている。

注目されるのが、海外就労者本人に対する規定だ。

海外での労働契約などが終了した後も、一定の条件のもとで違法に海外へ残留した労働者には、

8,000万~1億ドン

の罰金が科される。

ただし、これは「海外で犯罪を犯したら一律1億ドン」という制度ではない。

対象となるのは、政令で規定された海外就労・残留に関する行政違反である。

■ ベトナム政府が狙うのは労働者だけではない

今回の制度で特に注目したいのはここだ。

ベトナム政府は、

海外で違法に残留する労働者本人だけを問題にしているわけではない。

海外就労を扱う資格がないにもかかわらず、

情報提供や広告を行う
相談を受ける
労働者を募集する
労働者から金銭を徴収する

といった行為も規制対象となる。

さらに、労働者を海外へ違法に残留させるため、

強制する
勧誘する
誘惑する
欺く

といった行為についても罰則が規定されている。

つまり今回の対策は、

「海外へ行った本人が悪い」

だけでは終わっていない。

送り出しの入口に存在する、

無資格の仲介業者や悪質なブローカー

にも手を入れている。

ここは非常に重要だ。

■ ベトナム政府も問題を認識している

日本でベトナム人による犯罪や法令違反が報じられている。

しかし今回、ベトナム側まで調べて分かったことがある。

この問題を認識しているのは、日本だけではない。

日本で起きた事件はベトナム国内でも報道されている。

日本で働く自国民の法令違反は、ベトナム国内でも政策課題として議論されている。

在日ベトナム大使館も、日本に暮らす自国民へ法令順守を呼びかけている。

そしてベトナム政府は2026年、海外で違法に残留する労働者への罰則を強化するとともに、海外就労をめぐる無資格の仲介や違法残留への勧誘などにも規制を設けた。

これは、

「問題を起こした本人を取り締まる」

だけの対策ではない。

問題が生まれる可能性のある送り出しの仕組みそのものにも手を入れようとしている。

日本で起きている問題に対して、

送り出す側のベトナム政府も対策を進めている。

外国人労働者をめぐる問題は、受け入れる日本だけでは解決できない。

送り出す国と、受け入れる国。

その双方が、制度の入口から問題に向き合う段階に来ている。

【主な参考資料】

・警察庁「組織犯罪対策に関する統計」
・警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」
・出入国在留管理庁「技能実習生の失踪防止対策」
・OECD「Recruiting Immigrant Workers: Japan 2024」
・在日ベトナム大使館による注意喚起
・ベトナム国内における日本でのベトナム人法令違反に関する報道
・ベトナム政府「政令283/2026/NĐ-CP」

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