沖縄北部の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」の資金繰りが、厳しい局面を迎えている。
NIKKEI Financialは9月15日、「10月第1週にも資金が足りなくなるかもしれない」と報じた。2026年に入ってからは追加融資をめぐる動きも相次いで報じられている。
では、追加資金を確保できず、ジャングリアが事業を続けられなくなったらどうなるのか。
総事業費は約700億円。そのうち366億円は金融機関からの融資だ。
この366億円を調べると、一般的な企業融資とは仕組みが違った。さらに、テーマパーク用地も運営会社の所有ではなかった。
366億円は「ノンリコースローン」
2023年11月、琉球銀行と商工中金を共同アレンジャーとして、ジャングリアの建設資金を対象とした総額366億円のシンジケートローンが組成された。
琉球銀行は、この融資を「ノンリコースローン」と明記している。商工中金は、今回使われたプロジェクトファイナンスについて、「返済原資をプロジェクトから生み出されるキャッシュフローに限定し、担保も対象プロジェクトの資産のみに限定する融資手法」と説明している。
少なくともこの366億円は、ジャングリアが失敗した場合に森岡毅氏や加藤健史CEOが個人で返済する仕組みではない。ジャングリア事業から生まれるキャッシュフローを返済原資として貸し付けられた資金だ。
参加したのは琉球銀行、商工中金、沖縄振興開発金融公庫、沖縄銀行など11金融機関だった。
潰れたら366億円はどうなるのか
事業が停止したからといって、金融機関が366億円をそのまま失うわけではない。
現預金や建物、設備など、プロジェクトに残った資産から回収する。それでも返済できなかった部分は、ノンリコースローンの貸し手側が損失を負う。
そこで気になるのが、ジャングリアが建つ土地だ。
テーマパーク用地はオリオンビールからの借地だった
オリオンビールの有価証券報告書には、所有施設として「ジャングリア沖縄用地」が記載されている。
所在地は沖縄県名護市および国頭郡今帰仁村。用途は、
「ゴルフ場跡地をジャングリア沖縄の用地として株式会社ジャパンエンターテイメントへ賃貸」
となっている。
ジャングリアのテーマパーク用地は、運営会社ジャパンエンターテイメントが購入したものではない。オリオンビールが所有する土地を借りている。
ジャングリアの環境アセスメント上の事業規模は約56ヘクタール。東京ドーム約12個分に相当する。
オリオン所有の土地は、ジャパンエンターテイメントが売却して借金返済に充てられる資産ではない。
もともとはジャングリアのために買った土地ではない
オリオンビールは2002年12月、オリオン嵐山ゴルフ倶楽部を設立した。
ジャパンエンターテイメントの設立は2018年6月。オリオンは同年10月に同社へ出資し、2019年9月にはゴルフ場用地をテーマパーク用地として賃貸する契約を結んだ。
オリオンの当時の発表によると、テーマパークへの土地利用を提案したのはジャパンエンターテイメント側だった。オリオンは沖縄の観光産業の発展や地域経済への還元につながるとして提案を受け入れた。
ゴルフ場は2022年3月に閉鎖。その後、テーマパーク用地として貸し出された。2023年には土地を保有していたオリオン嵐山をオリオンビール本体が吸収合併している。
ジャングリアのために新たに取得した土地ではなく、オリオンが20年以上前から事業に使ってきた土地だった。
オリオンは出資し、取締役も送っている
オリオンビールは土地を貸しているだけではない。
ジャパンエンターテイメントホールディングスへ出資し、同社と子会社ジャパンエンターテイメントの双方へ取締役を派遣している。
2025年にはジャングリアのオフィシャル・マーケティング・パートナーにも就任。園内ではオリオンビールや泡盛などを独占的に提供し、オリオンホテル モトブ リゾート&スパもオフィシャルパートナーホテルとなった。
土地、出資、経営、ホテル、飲料。オリオンは複数の形でジャングリア事業に関わっている。
初年度は約100万人
ジャングリアは2025年7月25日に開業した。
開業1年間の来場者数は、隣接するスパを含め約100万人。売上高は100億円を超える見通しとされた。
開業前には、年間約300万人が訪れる沖縄美ら海水族館の半分程度となる約150万人で採算が見込めるとの説明がされていた。加藤CEOも1周年時点で、来場者数について「思うような数字に至らない」と説明している。
2027年1月からは祝日や繁忙期などを除いて月曜日を休業日とする。追加融資が難航しているとも報じられている。
金融機関は「諦めるか、まだ粘るか」
ここで366億円のノンリコースローンが効いてくる。
これ以上資金を投入しても回収できないと判断すれば、金融機関は追加支援を止めることができる。
追加資金によって営業を継続し、事業を立て直せると判断すれば、さらに融資する選択肢もある。既存融資の回収可能性にも関わるからだ。
実際、琉球銀行は2026年にもジャングリアへの追加融資を行ったと日本経済新聞が報じている。
追加融資には、新たに貸す資金だけでなく、すでに貸した資金をどこまで回収できるかという判断も絡む。
出資者はどうするのか
約700億円の事業費は、出資と借入をほぼ半分ずつ集めて構築された。刀やオリオンビールなどが出資し、金融機関が366億円を融資した。
出資者は会社の価値が失われれば、保有する株式の価値も失う。
さらに資金を入れて立て直しを狙うのか。これ以上の投資を止めるのか。
金融機関も、追加融資によって回収を目指すのか、追加リスクを取らないのかを判断する。
ここで止めるか、まだ粘るか。
ジャングリアの次の資金調達は、すでに巨額の資金を入れた出資者と金融機関にとっても大きな判断になる。


