なぜSNS調理動画は「黒い手袋」が増えたのか。白・青・黒・素手、衛生的なのはどれ?

SNSで流れてくる調理動画を見ていると、黒い使い捨て手袋を着けた料理人をよく見かける。

大きな肉を切る。ハンバーガーを組み立てる。鉄板で肉を焼く。仕上げにソースをかける。

黒いTシャツやエプロンに黒い手袋。明るい食材とのコントラストも強く、確かに画面では映える。

では、食品を扱う手袋として「黒」を選ぶことに、衛生上どんなメリットがあるのだろうか。

飲食店では白い手袋も使われる。食品工場では青い手袋をよく見る。そして素手で調理する店もある。

白、青、黒、素手。それぞれを比べてみる。

黒手袋の特徴は「汚れが目立たない」

黒いニトリル手袋の特徴の一つが、汚れの目立ちにくさだ。

世界的な手袋メーカーのAnsell⁠は、黒いニトリル手袋「MICROFLEX 93-852」について、黒色が「汚れを隠す」ことを特徴として明記している。この製品は食品取り扱いにも適合している。

肉汁やソースが付いても手元が汚れて見えにくい。黒を背景にすると明るい食材も目立つ。オープンキッチンや動画との相性はいい。

食品衛生という目的で考えると、この特徴は弱点にもなる。

汚れが見えなければ、交換のタイミングも見えにくい

使い捨て手袋は、一度着ければ調理終了まで使えるものではない。

肉を触る。野菜を触る。調味料のボトルを持つ。冷蔵庫を開ける。容器を触る。

作業を続ければ、手袋の表面にも汚れや微生物は付着する。

白い手袋なら肉汁やソース、焦げなどが付着すれば目につきやすい。「汚れた」と気づくこと自体が交換のきっかけになる。

黒では、その視覚的なサインが弱くなる。

決められた作業工程ごとに交換する管理が徹底されていれば、色を頼りにする必要はない。それでも、食品を扱う道具として「汚れが見えない」ことに衛生上のメリットは見いだしにくい。

白手袋は「汚れが見える」

白い手袋は、肉汁、ソース、油、焦げなど、多くの汚れが黒より目につきやすい。

一方、米、小麦粉、パン生地、クリームなど白っぽい食品の中に手袋の一部が混入した場合には見つけにくい。

食品を扱う現場では、手袋そのものが異物になる可能性もある。

そこで使われるのが青などの目立つ色だ。

青手袋は「食品にない色」を利用する

食品工場やセントラルキッチンで青い手袋を見かけることが多いのには理由がある。

食品衛生の現場では、ポリエチレン手袋を使用中に指先が切れ、食品へ混入するケースが指摘されている。

厚生労働省のHACCP関連の実務資料でも、その対策として「食品にはない色(青や黄、赤の目立つ色)」の手袋を使用する方法が示されている。

青い手袋だから、細菌を防ぐ性能が特別に高いわけではない。

破れた手袋の一部が食品に入ったとき、発見しやすくするための色だ。

手袋そのものが異物になる

手袋を着けたまま食品を混ぜている途中に指先が切れる。食品の中で手袋を外し、その一部が残る。

厚生労働省のHACCP関連資料では、手袋の先が切れていた場合には、扱っていた調理品の中に異物がないことを確認するまで提供しないことや、使用後のポリエチレン手袋を再利用しないことも示されている。

食品衛生では、異常を発見しやすくすることにも意味がある。

では「素手」は不衛生なのか

手袋を着けているだけで、食品が衛生的になるわけではない。

素手なら、手洗いの状態がそのまま食品衛生に影響する。

手袋なら、人の手と食品の間に物理的な壁を作れる。一方、汚染された手袋を使い続ければ、別の食品や器具へ汚れを広げる。

例えば、生肉を触ったあと、そのまま調味料のボトルを持つ。冷蔵庫を開ける。盛り付け用の皿を触る。さらに別の食品を扱う。

これでは交差汚染が起こり得る。

素手の場合は、食材や作業が変わるたびに適切な手洗いを行う。手袋の場合は、それに加えて適切なタイミングで交換する必要がある。

手袋は手洗いの代わりではない。

白・青・黒・素手を比べると

白は汚れを確認しやすい。

青は破損した手袋の混入を発見しやすい。

素手は手袋片が異物として混入することはないが、適切な手洗いが欠かせない。

黒は、汚れを隠す。

「見せる調理」と黒手袋

SNSでは、肉を切った断面、溶けるチーズ、流れるソース、鉄板から上がる湯気だけでなく、調理する手元も映像の一部になる。

黒い手袋は食材とのコントラストが強く、肉汁やソースが付いても目につきにくい。「見せる調理」には都合がいい。

SNSでは、その方が映えるのかもしれない。

だが食品衛生では、白には汚れを確認しやすい利点があり、青には異物を発見しやすい利点がある。

黒はSNSでは映えるかもしれない。だが、食品衛生という点では、白や青より弱い。

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