厚生労働省が8月28日に公表した人口動態統計速報で、2026年1〜6月の出生数は34万2068人となった。
前年同期の33万9280人から2788人、0.8%増。
上半期としては11年ぶりに前年を上回った。
長く減り続けてきた日本の出生数が、ついに増加へ転じた――。
そう受け取った人も少なくないだろう。
しかし、34万2068人は「日本人の出生数」ではない。
速報値には、日本国内で生まれた外国人も含まれている。
すでに公表されている別の統計と重ねると、「11年ぶり増加」の中身は単純ではない。
■ 速報値には外国人の出生も含まれる
人口動態統計には、似て非なる数字がある。
厚生労働省によれば、「人口動態統計速報」に含まれるのは、
・日本における日本人
・日本における外国人
・外国における日本人
・前年以前に発生した事象
だ。
ニュースで報じられた34万2068人は、国内の日本人だけを数えた数字ではない。
一方、「人口動態統計月報(概数)」は、日本国内で発生した日本人に関する事象を集計する。
公表は速報より遅く、2026年8月29日時点で確認できる2026年分の最新は3月までだ。
■ 1〜3月、日本人の出生数は増えていなかった
2026年1〜3月を前年同期と比べると、こうなる。
【外国人などを含む速報】
2025年 16万2955人
2026年 16万3299人
増減 +344人
【日本国内の日本人】
2025年 15万839人
2026年 15万530人
増減 -309人
速報は344人増。
ところが、日本人だけを見ると309人減っている。
少なくとも1〜3月については、出生数が増えたのは日本人の出生が増えたからではない。
外国人などを含む速報ではプラスになった一方、日本人だけでは前年割れが続いていた。
両者の差も、
2025年 1万2116人
2026年 1万2769人
と、653人拡大している。
ただし、この653人すべてを「外国人の出生増」とすることはできない。
速報には外国人出生以外にも、外国で生まれた日本人や前年以前に発生した事象が含まれているからだ。
しかし、別の統計を見ると、無視できない変化が起きている。
■ 日本における外国人の出生は実際に増えている
厚生労働省は2026年、「日本における人口動態―外国人を含む人口動態―」を公表した。
1955年から2024年まで、国内の出生や死亡を外国人も含めて分析した特殊報告だ。
日本国内における外国人の出生は近年、明確に増えている。
2022年 1万6874人
2023年 1万9714人
2024年 2万2878人
2年間で6004人増。
増加率は35.6%に達する。
2022年から2023年は16.8%増、2023年から2024年も16.0%増と、2年連続で大幅に増えた。
一方、日本人の出生数は同じ期間に減少を続けている。
つまり現在の日本では、
「日本人の出生数は減少する一方、日本国内における外国人の出生数は増加する」
という、逆方向の動きが起きている。
■ 外国にルーツを持つ出生はさらに多い
2024年の数字をもう一段分解すると、こうなる。
・出生総数 70万9051人
・日本における日本人 68万6173人
・日本における外国人 2万2878人(3.2%)
・少なくとも父母の一方が外国人 3万8389人(5.4%)
ここで注意したいのが、「外国人の出生」という統計上の区分だ。
2万2878人という数字は、外国にルーツを持つ子どもすべてを意味するわけではない。
人口動態統計では、父母の一方が日本人の場合、日本人の出生として集計されるケースがある。
そのため、外国にルーツを持つ出生という範囲まで広げると、2024年には3万8389人。
出生全体の5.4%に達する。
およそ19人に1人だ。
日本の出生数を考えるうえで、外国人や外国にルーツを持つ子どもの存在は、すでに無視できない規模になっている。
■ なぜ外国人の出生が増えているのか
背景として考えられるのが、日本で暮らす外国人そのものの急増だ。
出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は412万5395人。
前年末の376万8977人から35万6418人増え、前年比9.5%増となった。
初めて400万人を超え、過去最高を更新している。
そのうち女性は201万4735人に達している。
推移を見ると、
2022年末 307万5213人
2023年末 341万992人
2024年末 376万8977人
2025年末 412万5395人
となっている。
3年間で約105万人、約34%増えた。
外国人人口そのものが増えれば、日本国内で生まれる外国人の子どもが増えることも不自然ではない。
実際、
2022年 外国人出生 1万6874人
2023年 外国人出生 1万9714人
2024年 外国人出生 2万2878人
という増加は、在留外国人数が大きく増えた時期とも重なる。
日本の人口構成そのものが変化するなかで、外国人の出生が日本全体の出生数に与える影響も大きくなり始めている。
■ では上半期の「+2788人」は誰が増えたのか
今回、最も気になるのがここだ。
2026年上半期の出生数は、
2025年 33万9280人
2026年 34万2068人
となり、2788人増えた。
日本人だけの数字が判明しているのは1〜3月まで。
この期間では、日本人出生が309人減った一方、外国人などを含む速報は344人増えていた。
さらに長期統計では、日本国内の外国人出生が2022年から2024年の2年間で35.6%増えている。
この三つを重ねると、今回の「11年ぶり出生増」を、そのまま日本人の出生回復と捉えることはできない。
少なくとも1〜3月は、速報に含まれる「日本人以外」の部分が増えたことで、全体がプラスになった。
4月の速報も前年同月比で1954人増、6月も1545人増となっており、上半期後半も速報ベースでは出生数の増加が確認されている。
ただし、4〜6月の「日本国内の日本人だけ」の月報はまだ公表されていない。
そのため、上半期に増えた2788人のうち、外国人出生が具体的に何人を占めたのかまでは、現時点では確定できない。
■ 婚姻数も増えているが、それだけでは中身は見えない
2026年上半期の婚姻数は23万8979組。
前年同期から418組、0.2%増加した。
婚姻数が持ち直していることは、出生数にプラスに働く可能性がある。
ただ、少なくとも1〜3月については、日本人の出生数は前年同期を下回っている。
今回の「11年ぶり増加」を婚姻数だけで説明するのではなく、外国人を含む速報値であることも合わせて見る必要がある。
■ 「出生数が増えた」の意味が変わり始めている
これまで日本で「出生数」と言えば、少子化の指標として受け止められてきた。
しかし、いま日本で暮らす外国人は400万人を超え、外国人の出生数も増えている。
そうなると、
「日本で何人生まれたのか」
と、
「日本人の出生数がどうなったのか」
は、同じ意味ではなくなる。
2026年上半期の出生数が11年ぶりに増加したこと自体は事実だ。
しかし、少なくとも1〜3月について、日本人の出生数は増えていなかった。
その一方で、日本国内における外国人の出生は2022年から2024年のわずか2年間で35.6%増えている。
さらに、父母の一方が外国人である出生まで含めれば、2024年には出生全体の5.4%を占めている。
今回の「11年ぶり増加」は、少子化が反転したという一言だけでは捉えられない。
日本人の出生がどう変化しているのか。
外国人の出生がどこまで増えているのか。
そして、日本で生まれる子どもたちの構成そのものがどう変わっているのか。
これから日本の出生数を見る際には、「何人生まれたか」だけでなく、その数字の中身を見る必要がある。
今後公表される4〜6月の日本人出生数によって、「11年ぶり増加」の内訳はさらに明らかになる。
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【出典・参考資料】
・厚生労働省「人口動態統計速報」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
2026年上半期の出生数、および速報値の集計範囲を確認。
・厚生労働省「人口動態統計月報(概数)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1b.html
日本国内で発生した日本人の出生数を確認。2025年・2026年1〜3月の比較に使用。
・厚生労働省「人口動態統計」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
日本人・外国人を含む人口動態統計の定義、年次データを確認。
・政府統計の総合窓口 e-Stat「人口動態調査」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search?page=1&toukei=00450011
人口動態調査の年次・月次統計表を確認。
・厚生労働省「日本における人口動態―外国人を含む人口動態―」
2026年度人口動態統計特殊報告
日本国内における外国人出生数の長期推移、2022~2024年の出生数、父母の一方が外国人の出生数を確認。
・出入国在留管理庁「在留外国人統計」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/statistics/toukei_ichiran_touroku.html
在留外国人数の推移を確認。
・出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」
2025年末の在留外国人数412万5395人、前年比9.5%増、男女別人数などを確認。


