9月2日の米国市場は、主要3指数がそろって上昇した。
Dellの好決算をきっかけにAI関連株が買い戻され、NVIDIAも3%を超えて上昇。一方、通常取引ではソフトウェア株への売りが続いた。
しかし取引終了後、その空気を変える決算が発表された。
クラウド上のデータ基盤を提供するSnowflakeが市場予想を上回る決算と通期見通しの引き上げを発表。株価は時間外取引で一時約23%急騰した。
今回のデイリーマーケットでは、AIによって「必要なくなるソフトウェア」と、AIを使うために「必要になるデータ基盤」の違いを考える。
9月2日の米国市場
主要指数を確認しておこう。
指標
終値
前日比
NYダウ
53,061.95
+0.56%
S&P500
7,666.60
+0.46%
NASDAQ総合
26,217.83
+0.45%
ラッセル2000
2,953.17
+1.13%
VIX指数
15.20
-6.98%
米国株は3営業日続落から反発した。
上昇率だけを見れば主要3指数は0.5%前後だが、小型株で構成されるラッセル2000は1%を超えて上昇。買い戻しは一部の巨大テクノロジー株だけにとどまらなかった。
VIX指数も約7%低下しており、前日まで続いていた強いリスク回避は、いったん後退した形だ。
DellとNVIDIAがAI関連株を押し上げた
この日の上昇を主導したのは、再びAI関連株だった。
Dell Technologiesは、AIサーバー需要の拡大を背景に年間の売上高と利益見通しを引き上げ、株価は15.8%上昇した。
DellのサーバーにはNVIDIAの半導体が搭載されている。そのためDellの好決算は、AI向け設備投資がまだ続いていることを示す材料として受け止められた。
NVIDIAも3.2%上昇。
MicronやQualcommなどの半導体株にも買いが入り、前日まで売られていたAI関連株が反発した。
ただし、米国10年債利回りは4.78%前後と依然として高い。
ブレント原油も1バレル95.63ドルまで上昇しており、原油高と高金利という株式市場の重荷が消えたわけではない。
ADP雇用統計は予想を下回る
経済指標では、8月のADP全米雇用報告が発表された。
民間雇用者数は前月比3万8,000人増。
市場予想の約4万8,000人増を下回り、1月以来の低い伸びとなった。
内訳を見ると、教育・医療や建設では雇用が増えた一方、製造業は1万7,000人減、専門・企業向けサービスも1万6,000人減となった。
雇用の減速は通常、利上げ観測を弱める材料になる。
しかし現在は原油高によるインフレ懸念も残っているため、「雇用が弱ければ単純に株高」という状況でもない。
市場は今後発表される米雇用統計や物価指標を確認しながら、景気減速とインフレのどちらをより警戒するべきかを判断することになる。
今日の1銘柄:Snowflake
今回取り上げる1銘柄は、Snowflakeだ。
Snowflakeは、企業が持つ大量のデータをクラウド上で保存し、整理・分析するためのプラットフォームを提供している。
企業の売上データ、顧客情報、在庫、Web上の行動履歴などは、多くの場合、社内の複数のシステムに分散している。
Snowflakeは、それらを一つの基盤へ集め、必要な部署やシステムから利用できるようにする。
AIが高度になっても、企業のデータが古い、バラバラ、重複している、利用権限が整理されていない状態では、実際の業務には使えない。
AIに何を考えさせるか以前に、AIへ何を読ませるかを整える必要がある。
Snowflakeは、その部分を担う企業だ。
製品売上高は37%増
Snowflakeが発表した2027年度第2四半期決算では、売上高が15億5,000万ドルとなり、前年同期比35%増加した。
中核となる製品売上高は14億9,200万ドル。
前年同期比では37%増となり、市場予想を上回った。
調整後1株利益は0.62ドル。市場予想の0.45ドルを大きく上回っている。
さらに会社側は、2027年度の製品売上高見通しを従来の58億4,000万ドルから60億7,000万ドルへ引き上げた。
実現すれば、前年度比36%の増加となる。
Snowflakeの主な指標
2027年度第2四半期
売上高
15億5,000万ドル
製品売上高
14億9,200万ドル
製品売上高の前年同期比
+37%
顧客数
1万4,554社
年間製品売上高100万ドル超の顧客
828社
売上継続率
126%
通期製品売上高見通し
60億7,000万ドル
売上継続率が100%を超えているのは、既存顧客の利用額が全体として増えていることを意味する。
新規顧客を増やしているだけではない。
導入した企業が、Snowflake上で扱うデータや業務を増やしている。
ここが今回の決算で特に強かった部分だ。
AIに「食われるソフト」と「必要になるソフト」
9月2日の通常取引では、ソフトウェア関連株が市場の弱い部分となった。
生成AIが進化すれば、これまで人間が操作していた業務ソフトやサービスの一部は、AIへ置き換えられる可能性がある。
そのため現在の市場では、「AIに仕事を奪われる企業」だけでなく、「AIに機能を奪われるソフトウェア企業」も選別され始めている。
しかしSnowflakeの決算が示したのは、AIの普及によって必要性が高まるソフトウェアもあるということだ。
AIは、データがなければ動けない。
企業がAIを本格的に導入するほど、社内データを集め、整理し、安全に利用するための基盤が必要になる。
前日のDellが示したのは、AIを動かすサーバーという「箱」の需要だった。
今回のSnowflakeが示したのは、その箱の中でAIに使わせる「データ」の需要だ。
NVIDIAの半導体。
Dellのサーバー。
Amazon、Microsoft、Googleのクラウド。
そしてSnowflakeのデータ基盤。
AI投資は、一つの企業や一つの業界だけで完結するものではない。
時間外23%高でも、リスクは残る
好決算だったからといって、Snowflakeにリスクがないわけではない。
Snowflakeの料金は、顧客が実際に使った計算処理、保存容量、データ転送量などに応じて変わる。
利用量が増えれば売上も伸びやすいが、企業がIT予算を削減し、データ処理を減らせば売上にも影響する。
MicrosoftやDatabricksなどとの競争も激しい。
また、将来受け取る契約済み売上の指標であるRPOは、前年同期の69億3,200万ドルから90億400万ドルへ増加した一方、前四半期の92億500万ドルからは減少している。
通常取引でSnowflake株は4%を超えて下落していた。
そこから決算発表後に一時約23%上昇したこと自体、この銘柄に対する市場の期待と不安がどちらも大きいことを示している。
1日で大きく上昇したという理由だけで、すぐに買うべき銘柄ではない。
NISA・iDeCoで投資信託を積み立てる人が見るべきこと
NISAやiDeCoでS&P500、NASDAQ、オルカンなどを積み立てている人にとって、Snowflakeの23%上昇を見て短期売買をする必要はない。
見るべきなのは、AI投資がどこまで広がっているかだ。
AI相場がNVIDIAの半導体だけに依存しているのであれば、半導体への投資が鈍った瞬間に市場全体が不安定になりやすい。
しかし、サーバー、クラウド、データ管理、企業向けソフトウェアへ実需が広がっているのであれば、AIは単なる期待ではなく、企業活動の中へ入り始めていることになる。
投資信託では多くの企業をまとめて保有する。
だからこそ、毎日のニュースで一つの銘柄が上がったか下がったかを見るだけではなく、
「どの産業にお金が流れているのか」
「成長が一部の企業から周辺企業へ広がっているか」
を見ることに意味がある。
デイリーマーケットは、積立を止めたり銘柄を頻繁に入れ替えたりするためのものではない。
自分が投資信託を通じて保有している世界の企業で、いま何が起きているのかを知るためのものだ。
今日のポイント
9月2日の米国市場は、主要3指数がそろって反発した。
Dellの好決算を受けてAIサーバー需要への期待が高まり、NVIDIAなどの半導体株も上昇した。
そして取引終了後には、Snowflakeが好決算と通期見通しの引き上げを発表。株価は時間外で一時約23%急騰した。
AIによって必要なくなるソフトウェアがある一方、AIを実際の業務で使うために必要になるデータ基盤もある。
今回のSnowflake決算は、AI投資が半導体やサーバーから、企業データの管理と活用へ広がっていることを示した。
一日の株価だけを追う必要はない。
長期の積立投資家にとって重要なのは、AIという成長テーマが一部の巨大企業だけで終わらず、産業全体へ広がっているかを確認することだ。
※本記事は市場動向の解説を目的としたものであり、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。
主な参照:
Snowflake「2027年度第2四半期 投資家向け資料」
Reuters「Snowflake lifts annual product revenue forecast」


