9月1日の米国株式市場は、主要3指数がそろって下落した。
NYダウは0.79%安、S&P500は0.71%安、NASDAQ総合は1.03%安。
米国とイランの緊張が再び強まり、原油価格と国債利回りが上昇。インフレと追加利上げへの警戒から、ハイテク株を中心に売りが広がった。
しかし取引終了後、まったく違う動きを見せた銘柄がある。
今日の1銘柄は、
Dell Technologies(DELL)
だ。
Dellは通常取引では約6.8%下落したが、決算発表後の時間外取引で約8%上昇。
売上高は過去最高の470億ドルに達し、AIサーバーの受注額は直近1年間で1300億ドルを超えた。
Dellは、もはや単なるパソコン会社ではない。
9月1日の米国市場
主要指数を確認しておこう。
指標
終値
前日比
NYダウ
52,766.88
-0.79%
S&P500
7,631.47
-0.71%
NASDAQ総合
26,099.77
-1.03%
Russell 2000
2,920.13
約-1.2%
SOX指数
11,288.61
-2.14%
VIX指数
16.34
+9.52%
主要3指数は3日続落。
とくにNASDAQ総合とSOX指数の下落が大きく、NVIDIAやAmazonなどの大型ハイテク株が指数を押し下げた。
一方、Appleは2.6%上昇。
9月1日付でジョン・ターナス氏がティム・クック氏の後任CEOに就任し、新体制への期待から買いが入った。
VIX指数は16.34まで上昇した。
20を大きく下回っているため市場がパニック状態に入ったわけではないが、投資家の警戒は明らかに強まっている。
原油価格が5%を超える急騰
この日の米国市場を押し下げた最大の材料が、原油価格の上昇だった。
米国とイランの軍事的緊張が再び強まり、米WTI原油は5.2%上昇して1バレル90.22ドル。
ブレント原油も4.6%上昇して94.65ドルとなった。
原油価格が上がれば、ガソリン、航空運賃、輸送費、電力料金、製品価格へと影響が広がる。
市場が警戒しているのは、エネルギー価格の上昇によってインフレが再加速し、FRBが追加利上げに動くことだ。
米10年国債利回りは4.79%まで上昇。
金利上昇に弱いハイテク株や成長株が売られ、NASDAQ総合は1%を超えて下落した。(AP)
米製造業は拡大、雇用には減速感
8月のISM製造業景況指数は54.6となった。
市場予想の55.2を下回り、7月の55.6からも低下したが、景気拡大と縮小の境目となる50は8カ月連続で上回っている。
一方、7月のJOLTS求人件数は727万1000件。
6月からはわずかに増えたものの、市場予想には届かなかった。
採用件数は6月の533万2000件から、7月は505万4000件へ減少した。
企業が大規模な人員削減は避ける一方で、新たな採用にも慎重になっていることが分かる。
米国の雇用市場は、「解雇は少ないが、採用も増えない」状態が続いている。(米労働統計局)
本来なら、雇用や景気の減速は金利低下につながりやすい。
しかしこの日は、原油高によるインフレ懸念の方が強く意識された。
今日の1銘柄:Dell Technologies
Dellと聞けば、多くの人が思い浮かべるのはパソコンだろう。
企業向けや個人向けのデスクトップPC、ノートPC、モニターを販売する会社。
日本でも広く知られている。
しかし現在のDellを動かしているのは、パソコンだけではない。
NVIDIAのGPUを搭載したAIサーバー、ストレージ、ネットワーク機器を組み合わせ、AIデータセンターの計算基盤を構築する事業が急拡大している。
Dell自身がNVIDIAのようにGPUを設計しているわけではない。
GPU、CPU、メモリ、ネットワーク、ストレージ、冷却設備を組み合わせ、実際に企業やAIクラウド事業者が使えるサーバーシステムへ仕上げる役割を担っている。
AI向け半導体がエンジンだとすれば、Dellはエンジンを載せて実際に走る車体をつくる会社に近い。
売上高は過去最高の470億ドル
Dellの2027年1月期第2四半期売上高は、
470億ドル
前年同期比では、
+58%
となった。
市場予想は約449億ドルだったため、大幅な上振れだ。
純利益は41億3300万ドルで、前年同期の11億6400万ドルから255%増加。
希薄化後EPSは、
6.34ドル
前年同期比で273%増加した。
調整後EPSも7.04ドルとなり、市場予想の4.91ドルを大きく上回っている。
単に売上高が伸びただけではない。
利益も、それ以上の速度で増えている。(Dell Technologies)
AIサーバー受注は1四半期で609億ドル
今回の決算で最も目を引くのが、AIサーバーの受注額だ。
Dellが第2四半期だけで獲得したAIサーバーの受注額は、
609億ドル
約9兆7000億円に達した。
AIサーバー売上高は164億ドルで、前年同期から2倍に増加。
さらに受注残高は、
950億ドル
まで膨らんだ。
受注残高とは、すでに注文は入っているものの、まだ製品の出荷や売上計上が終わっていない金額だ。
つまりDellは、約15兆円に相当する仕事をすでに抱えていることになる。
直近12カ月のAIサーバー受注額は、
1300億ドル超
1ドル160円で換算すれば、20兆円を超える規模だ。
DellのAIサーバーは、CoreWeaveやNscaleなどのAIクラウド事業者が、大規模な計算環境を構築するために利用している。
AI投資が「将来への期待」ではなく、実際の注文と売上へ変わっていることが分かる。(Reuters)
AIだけではない
今回のDell決算で注目すべきなのは、AIサーバーだけが伸びているわけではないことだ。
サーバー、ストレージ、ソフトウェアを含むインフラストラクチャー・ソリューションズ部門の売上高は、
318億ドル
前年同期比では、
+89%
となった。
内訳を見ると、
- AI最適化サーバー:164億ドル、+100%
- 従来型サーバー・ネットワーク:105億ドル、+122%
- ストレージ:49億ドル、+26%
となっている。
AIエージェントが企業内で使われるようになれば、NVIDIAのGPUだけでなく、通常のCPUサーバーやストレージ、ネットワーク機器も必要になる。
AIサーバーの増加が、周辺インフラの更新需要まで引き起こしている。
さらにパソコン部門の売上高も150億ドルで、前年同期比20%増加。
とくに法人向けPCは22%増となり、DellによればPC部門は過去5年間で最も高い成長率を記録した。
DellはAIサーバー企業へ変わりながら、本来のPC事業も伸ばしている。
通期売上高を250億ドル上方修正
Dellは今回、2027年1月期の通期売上高見通しを大幅に引き上げた。
従来予想は、
1670億ドル
だった。
新たな予想は、
1920億ドル
一度の決算で250億ドル、約4兆円も引き上げたことになる。
前年同期比では69%増となる見通しだ。
AI最適化サーバーの年間売上高予想も、
600億ドルから740億ドル
へ引き上げた。
前年比では3倍になる。
調整後EPS予想も17.90ドルから25.50ドルへ上方修正。
売上高だけでなく、利益見通しも大きく引き上げている。
第3四半期についても、売上高490億ドル、調整後EPS6.50ドルを予想。
いずれも市場予想を大幅に上回る水準だ。
DellはもうPC会社ではない
第2四半期のDellの売上高470億ドルのうち、PC部門は150億ドルだった。
一方、サーバーやストレージを含むインフラ部門は318億ドル。
売上高の約3分の2を、企業向けインフラが占めている。
もちろんPCは依然として重要な事業だ。
しかし現在のDellの成長を説明するうえで、PCだけを見ても実態は分からない。
現在のDellは、
- NVIDIA製GPUを搭載するAIサーバー
- 通常のCPUサーバー
- ネットワーク機器
- 大容量ストレージ
- 法人向けPC
- 保守・運用サービス
を一体で提供する、AIインフラ企業へ変わりつつある。
GPUを設計するNVIDIAだけでは、AIデータセンターは完成しない。
大量のGPUをサーバーへ組み込み、ネットワークで接続し、データを保存し、企業が運用できる状態にする会社が必要だ。
そこにDellの仕事がある。
それでもリスクはある
決算は極めて強い。
ただし、AIサーバー事業にリスクがないわけではない。
第一に、AIサーバーの売上高が急拡大するほど、NVIDIAをはじめとする部品供給企業への依存も強くなる。
GPUやメモリを十分に確保できなければ、注文があっても出荷できない。
第二に、現在のAI投資はCoreWeaveのようなAIクラウド企業による巨額の設備投資に支えられている。
顧客企業の資金調達環境が悪化したり、AIデータセンター投資が減速したりすれば、Dellにも影響が及ぶ。
第三に、サーバーはソフトウェアほど利益率が高い事業ではない。
ただし今回、インフラ部門の営業利益率は前年同期の8.8%から15.0%へ上昇している。
Dellは需要の増加だけでなく、価格の引き上げや製品構成の改善によって、利益率も押し上げている。
今日のポイント
9月1日の米国市場を一言で表すなら、
「原油と金利が株式市場を押し下げる一方、AIインフラ需要は止まっていない」
という一日だった。
NASDAQ総合は1.03%安。
SOX指数は2.14%安。
Dellも通常取引では約6.8%下落した。
しかし決算発表後、時間外取引で約8%上昇した。
- 売上高470億ドル、+58%
- 純利益41億ドル、+255%
- AIサーバー受注609億ドル
- AIサーバー受注残950億ドル
- 直近1年間の受注1300億ドル超
- 通期売上高予想を1920億ドルへ引き上げ
- AIサーバー売上高予想を740億ドルへ引き上げ
AI相場というと、NVIDIAや半導体企業ばかりが注目される。
しかしGPUが売れれば、それを搭載するサーバーが必要になる。
サーバーが増えれば、ネットワーク、ストレージ、冷却、電力も必要になる。
Dellの決算は、AI投資の資金が半導体の外側へ広がっていることを示している。
Dellは、もう単なるパソコン会社ではない。
AIデータセンターを実際に形にする企業として、NVIDIAの次に続く巨大な需要を取り込み始めている。


