なぜ、オルカンは初心者に勧められるのか?――その理由は「指数の構成方法」にあった

新NISAの普及とともに、投資初心者にも広く知られるようになった「オルカン」。

全世界の株式に分散投資できる投資信託として、「何を買えばいいか分からないならオルカン」と勧められた人も多いのではないでしょうか。

ところが、実際にその中身を見てみると、ある疑問が出てきます。

「全世界っていうけど、結局ほとんどアメリカじゃないか」

それならS&P500でいいのではないか。

そう感じるのも不思議ではありません。

しかし、オルカンの構成がどのように決まっているのかを知ると、この「米国比率の高さ」の見え方は少し変わります。

この記事は、オルカンを推奨するためのものではありません。

「投資を始めたいけれど、どの国や企業を選べばいいか分からない人」に、なぜオルカンという選択肢がよく提示されるのか。

そして、よく分からないままオルカンを勧められた人に向けて、その仕組みを考えてみます。

なぜ「全世界」なのに米国株が多いのか

オルカンの代表格である「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、世界の株式市場を対象とする指数への連動を目指しています。

ここで重要なのが、指数の構成方法です。

基本的には、株式市場での時価総額が大きな企業ほど指数に与える影響も大きくなります。

つまり、世界の企業を均等に持っているわけではありません。

現在の世界の株式市場では米国企業の時価総額が非常に大きいため、その結果としてオルカンでも米国株の比率が高くなっています。

これは、

「運用会社が将来もアメリカが強いと予想しているから」

ではありません。

現在の世界の株式市場を時価総額という基準で見た結果です。

この仕組みを知らずに構成比を見ると、

「結局ほとんどアメリカじゃないか」

となります。

しかし仕組みを知ったうえで見ると、

「世界全体を時価総額で見ると、今はやはりアメリカの比重がこれだけ大きいのか」

となります。

同じ数字を見ていても、意味はかなり違います。

もしアメリカが衰退したら?

では、今後アメリカ企業が世界での競争力を失っていった場合、どうなるのでしょうか。

ここが、全世界株式を理解するうえで重要なポイントです。

米国企業の時価総額が世界全体に対して相対的に小さくなれば、全世界株式指数に占める米国の比率も低下していきます。

反対に、別の国の企業価値が大きくなれば、その国の存在感が高まります。

たとえば今後30年間でインド企業が大きく成長し、米国企業の存在感が相対的に低下したとします。

その場合、

米国企業の相対的な時価総額が低下
↓
世界株式市場に占める米国の比率が低下
↓
オルカンの米国比率も低下
↓
成長した国や企業の比率が上昇

という変化が起こります。

投資家自身が、

「そろそろアメリカは危ない」

「これからはインドだ」

と予想して、国ごとに投資先を乗り換える必要はありません。

世界の株式市場の勢力図が変われば、その変化が指数にも反映されていくからです。

30年後のオルカンは、今と同じでなくていい

これは長期投資を考えるうえで、意外に重要です。

現在のオルカンだけを見れば、米国株の影響を強く受ける商品です。

しかし、30年後も同じ構成である必要はありません。

今後もアメリカ企業が世界をリードするなら、米国の比重が高い状態が続くでしょう。

インドや他の新興国が台頭すれば、その比重が大きくなる可能性があります。

今はそれほど存在感のない国から世界的企業が次々と生まれれば、その変化も指数に反映されていきます。

つまりオルカンは、

「現在の世界の勢力図を固定して30年間持つ商品」ではありません。

世界の株式市場が変化すれば、その中身も変化していきます。

そもそも株価指数はなぜ長期投資に使われるのか

もう少し視点を広げてみます。

株式投資、とくに指数への長期投資とは何に投資しているのでしょうか。

単純に「世界はこれからもっと豊かになる」と考えるだけではありません。

たとえば人々の実質的な生活水準がそれほど変わらなくても、物価が上昇すれば、企業の売上や利益は名目上増える可能性があります。

逆に物価が下がったとしても、技術革新によって生産コストが低下すれば、利益率が上昇して企業価値が高まることもあります。

さらに企業は常に入れ替わります。

かつて世界を代表していた企業が衰退する一方、新しい技術や産業から巨大企業が誕生します。

指数も、同じ企業を永久に同じ割合で保有するわけではありません。

長期の指数投資とは、現在の勝者だけを持ち続けるというより、

変化し続ける企業の勢力図そのものに投資する

という側面があります。

S&P500とオルカン、どちらが正解なのか

ここでよく比較されるのがS&P500です。

過去のリターンを見て、

「S&P500の方がいい」

「いや、世界分散のオルカンの方がいい」

という議論は何度も繰り返されています。

しかし、これは単純にどちらが優れているという話ではありません。

S&P500を選ぶのであれば、米国企業を中心に投資するという明確な選択をしています。

一方、全世界株式では、将来どの国の企業が世界の中心になるのかについて、自分で強い予想をする必要がありません。

言い換えれば、

S&P500は「米国を選ぶ」。

オルカンは「どの国を選ぶかという判断を減らす」。

この違いがあります。

将来も米国企業が強いと考えるなら、S&P500を選ぶことには十分な理由があります。

個別株を分析できる人なら、自分で企業を選ぶ方法もあります。

特定の国や産業の成長に確信があるなら、そこへ投資する方法もあります。

オルカンだけが正解という話ではありません。

なぜ初心者にオルカンが勧められるのか

では、なぜ投資初心者にオルカンがよく勧められるのでしょうか。

その理由は単に、

「世界中に分散しているから安心」

だけではありません。

投資を始めたばかりの人に、

「今後30年間、アメリカが世界経済の中心であり続けると思いますか」

「インドはどこまで成長すると思いますか」

「中国企業の将来をどう評価しますか」

「次の巨大産業はどの国から生まれると思いますか」

と聞いても、簡単に答えられるものではありません。

むしろ、投資経験のある人でも難しいでしょう。

ならば、

分からないものを無理に当てにいかない。

世界の企業価値の変化を、そのまま指数に反映させていく。

これが、投資先を自分で選べない人にとってオルカンが一つの有力な選択肢になる理由です。

「オルカンを買っておけばいい」と言われた人へ

誰かに、

「初心者ならオルカンを買っておけばいいよ」

と言われて、そのまま買った人もいるかもしれません。

もちろん、投資に絶対はありません。

オルカンも株式である以上、大きく値下がりすることがあります。

世界的な株価低迷が長期間続く可能性もあります。

そして、オルカンがすべての人にとって最適な投資先というわけでもありません。

ただ、

「なぜ全世界なのにアメリカが多いのか」

「なぜ初心者に勧められるのか」

という疑問に対する答えは、その仕組みの中にあります。

現在アメリカが大きいから、アメリカを多く持つ。

将来その勢力図が変われば、構成も変わっていく。

どの国が30年後の勝者になるのか、自分で予想する必要を減らせる。

だから、

「投資を始めたい。でも、どの国や企業を選べばいいのか分からない」

という人に対してなら、筆者もこう答えます。

心配なら、オルカンで行くのもいいと思いますよ。

ただし、「みんなが勧めているから」ではなく、

なぜオルカンなのかを理解したうえで。

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