欧州で反移民の動き拡大 独AfD圧勝、セウタ危機から「送還」へ 日本が見るべき現実

ドイツ東部ザクセン=アンハルト州で9月6日に行われた州議会選挙で、右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が44.4%(暫定)を獲得し、第1党となった。

前回2021年の20.8%から、わずか5年で倍以上。

長く同州を率いてきたCDUを大きく引き離す圧勝となった。

日本でも今朝、この結果が大きく報じられ始めた。

しかし、いま欧州で起きていることはドイツの一州選挙だけではない。

スペインでは数万人規模の抗議。

英国では移民を乗せた小型船をめぐり、ドーバーに続いてポーツマスでも抗議者と警察が対峙した。

デンマークやフィンランドでも移民政策をめぐる街頭行動が起きている。

さらにEUでは、難民申請を却下されるなどして合法的な滞在資格を失った人を域外へ送る「return hubs(送還拠点)」の具体化が始まった。

規模も事情も国ごとに違う。

それでも、欧州の各地で同じ問いが政治の中心へ出てきている。

移民をどこまで受け入れるのか。

そして、その議論は今、

「これ以上入れない」から「退去すべき人をどう帰すか」へ

進み始めている。

直近の転換点となったセウタ危機

2026年夏、その空気を一気に可視化したのがスペイン領セウタだった。

北アフリカのモロッコと国境を接する人口約8万4000人の小さなスペイン領に、7月末、1週間ほどの間に7万2000人を超える移民が流入した。

人口規模に匹敵するほどの人数が短期間で押し寄せたことになる。

9月2日にはセウタで大規模な抗議が行われ、マドリードをはじめスペイン各地にも広がった。

要求は単純な「外国人排斥」だけではない。

国境管理、治安、収容能力、政府の対応、そしてセウタというスペイン領をどう守るのか。

複数の問題が一気に噴き出した。

セウタ危機が、英国やドイツなど各国の動きを直接引き起こしたわけではない。

それぞれの国には、それ以前から固有の移民問題があった。

ただ、セウタで7万人を超える大規模流入が起きた直後、欧州各地でそれまで蓄積していた問題が同時期に表面化した。

2026年夏の欧州を見る上で、セウタは大きな転換点の一つになった。

英国ではドーバーからポーツマスへ

英国では英仏海峡を小型船で渡る移民が長年政治問題になっている。

9月5日、ドーバーでは数百人の反移民デモ参加者が港へ向かう道路を一時封鎖した。

そして翌6日、今度はポーツマスで事態が起きた。

約140人を乗せた小型船が到着すると、数百人の抗議者が集結。

移民を処理施設へ移送する車両を阻止しようとし、警察との間で緊張が高まった。

一部では警察車両への損傷や規制線を突破する動きもあった。

スペインの数万人規模の抗議と比べれば人数は小さい。

しかし英国では、ドーバー、ポーツマスと2日続けて港で直接行動が起きた。

移民問題が議会や世論調査だけでなく、街頭へ出てきている。

この問題は2011年から積み上がってきた

現在の欧州の状況は、2026年になって突然生まれたものではない。

今につながる大きな転換点の一つは、2011年の「アラブの春」だった。

シリア内戦、リビアの混乱などによって中東・北アフリカが不安定化し、地中海やトルコを経由して欧州へ向かう人口移動が拡大した。

そして2015年、欧州難民危機が起きた。

この年、地中海を渡って欧州へ到着した難民・移民は100万人を超え、EUへの庇護申請も急増した。

それから10年以上が経った。

流入した人々は生活を始め、家族を形成し、地域社会やコミュニティを作った。

その一方で、新しい流入も続いた。

住宅。

教育。

社会保障。

雇用。

治安。

宗教や文化。

個々には別の問題だったものが、時間の経過とともに一つの「移民政策」という政治課題へ集約されていった。

そしてドイツで44.4%

その積み重ねが最も明確な数字になったのが、今回のザクセン=アンハルト州議会選挙だ。

AfDは44.4%(暫定)を獲得。

2021年の20.8%から倍以上へ伸ばし、第1党となった。

これは単なる世論調査ではない。

実際の選挙で、投票者の4割を超える支持を集めた。

しかもドイツ全国でもAfDは高い支持を維持している。

他の主要政党はAfDとの連立を否定しているため、州政府を実際に率いられるかは別問題だ。

それでも、この選挙結果がドイツ政治に与える衝撃は大きい。

フランスでは国民連合(RN)が次期大統領選を現実的に狙う位置にいる。

オーストリアでは自由党(FPÖ)が高支持率を維持している。

ノルウェーでも進歩党(FrP)が支持を伸ばしている。

欧州では、

街頭で人が動き、投票でも人が動いている。

「入れない」から「帰す」へ

さらに重要なのが、政府レベルの変化だ。

9月4日、デンマーク、ドイツ、オーストリア、オランダ、ギリシャの5カ国は、EU域外に「return hubs」と呼ばれる送還拠点を設けるため、第三国との協定を進めることで合意した。

主な対象は、難民申請を却下されるなどしてEU域内に合法的に滞在する資格を持たない人だ。

ここは現在の欧州を見る上で重要だ。

これまで移民政策というと、

「国境でどう止めるか」

が中心だった。

しかし今は、

「すでに入国した人のうち、滞在資格を持たない人をどう実際に帰すか」

まで政策が進んでいる。

もちろん、欧州に暮らす移民すべてを国外へ出すという話ではない。

対象は、まず退去命令を受けた人や合法的な在留資格を持たない人だ。

人権面から制度に反対する声もある。

それでも欧州各国が「送還の実効性」を具体的な制度として作り始めたこと自体が、大きな政策転換である。

日本の在留外国人は400万人を超えた

ここで日本を見る。

2025年末の在留外国人数は412万5395人。

前年末より35万6418人増え、増加率は9.5%。

初めて400万人を突破した。

永住者は94万7125人。

特定技能は39万296人。

外国人労働者も2025年10月末で257万1037人となり、過去最多を更新している。

日本も、外国人受け入れを一部の産業だけの問題として扱える規模ではなくなった。

政府も2026年1月、

「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」

を決定した。

「共生」だけではない。

政策名称そのものに「秩序ある」という言葉が入っている。

日本でも受け入れ政策が次の段階へ入りつつある。

日本は欧州から何を見るべきか

日本と欧州は同じではない。

国境も違う。

歴史も違う。

移民の出身国や入国経路も違う。

だから「欧州でこうなったから日本も必ずこうなる」と単純化することはできない。

ただし、欧州の15年間から見えることはある。

移民政策は、入国時点だけの政策ではない。

人が入れば生活が始まる。

家族ができる。

学校が必要になる。

商店ができる。

宗教施設ができる。

そしてコミュニティが形成される。

一度形成された社会を、後から簡単に元へ戻すことはできない。

だからこそ考えるべきなのは、問題が起きてからの対応だけではない。

誰を受け入れるのか。

どの程度の人数を受け入れるのか。

家族帯同をどうするのか。

永住や帰化には何を求めるのか。

日本の法律や社会のルールと文化・宗教上の規範が衝突した場合、何を優先するのか。

そして在留資格を失った人を、実際に帰国させられる制度になっているのか。

2011年のアラブの春から約15年。

2015年の欧州難民危機から約11年。

そして2026年、セウタでは7万人を超える流入が起き、英国では港で抗議が続き、EU各国は送還拠点を作ろうとしている。

その中でドイツのAfDは、州議会選挙で44.4%(暫定)を取った。

別々に見れば、それぞれ別のニュースだ。

しかし時系列で並べると、欧州の移民政策がいま大きな転換点にあることが見えてくる。

日本はまだ、欧州と同じ地点にはいない。

だからこそ、考える時間がある。

問題が大きくなってから「どうするか」を決めるのではなく、どこまで受け入れ、どこに線を引くのかを先に決める。

欧州でいま起きていることは、遠い国の出来事として眺めるだけでは足りない。

日本がこれからどのような社会をつくるのかを考えるための、現実の材料である。

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