日本に暮らす外国人が増え続けている。
2025年末の在留外国人数は412万5,395人。前年末から35万6,418人、9.5%増え、初めて400万人を突破した。2015年末は223万2,189人だったため、10年間で約190万人増えたことになる。
この412万人は、すべて外国人労働者という意味ではない。永住者や留学生なども含まれる。一方、2025年10月末時点の外国人労働者は257万1,037人。こちらも過去最多で、前年から26万8,450人増えている。
さらに、この412万人とは別に、2026年1月1日時点で6万8,488人の不法残留者が確認されている。前年より6,375人減少したが、在留外国人数には含まれない。
日本政府は今後も、人手不足への対応として外国人材を受け入れていく。
特定技能1号と、2027年4月に始まる育成就労について、2028年度末までの受け入れ上限は合わせて約123万人。内訳は特定技能1号80万5,700人、育成就労42万6,200人だ。現在の在留外国人数に123万人をそのまま追加する数字ではないが、政府自身が「人手不足への対応の一つとして外国人の受入れも欠かせない」と説明している。
欧州では移民管理を強化
その一方、欧州では移民・難民政策の見直しが進んでいる。
EUでは2026年6月、「移民・難民協定」が全面適用された。不法入国者の登録や本人確認、国境での審査を強化し、難民申請や送還手続きを迅速化する新たな仕組みが始まっている。
EUが外国人労働者の受け入れそのものを停止したわけではない。合法的な労働移動は続けながら、不法入国や難民申請、国境管理、送還を厳格化する方向だ。
日本では外国人材の受け入れ制度が拡大している。
その制度の周辺には、どんな人や組織がいるのか。
公開情報を追うと、政治家、その親族が関わる企業、外国人材関連団体に複数の接点が見えてくる。
岸田文雄氏の実弟は「特定技能」の支援会社代表
岸田文雄元首相の実弟・岸田武雄氏は、「株式会社フィールジャパン with K」の代表取締役を務めている。
同社の公式サイトには、業務内容として「特定技能制度 外国人採用支援」と明記され、特定技能制度を活用したインドネシア人の国内就労を支援している。登録支援機関としての登録番号も掲載されている。
もともとは2009年に設立された旅行会社で、東南アジアや中東からの訪日旅行も手掛けている。特定技能制度が始まった後、登録支援機関として外国人の就労支援へ事業を広げた。
過去に利益誘導ではないかとの批判が出た際、同社側は取材に対し、岸田氏に何かを依頼したことはなく、兄弟間で仕事の話もしないという趣旨の説明をしている。
麻生家の企業グループにも特定技能事業
麻生家にも外国人材事業との接点がある。
麻生太郎元首相の弟・麻生泰氏は、麻生グループの人材会社「アソウ・ヒューマニーセンター」の取締役を務めている。同社は人材派遣、人材紹介に加え、行政受託も主な事業として掲げている。
そのグループ会社「株式会社エヌ」は、農業・漁業分野で外国人材の派遣・職業紹介を行っている。
同社は特定技能の登録支援機関で、「特定技能」「特定活動」の外国人材派遣、有料職業紹介、登録支援サービスを事業として明記している。ベトナム、カンボジア、ネパール、インドネシア、フィリピンからの外国人材受け入れ実績も公表している。
株式会社エヌの株主には、アソウ・ヒューマニーセンターのほか、長崎県や長崎県農業協同組合中央会なども名を連ねている。
ここでも、麻生太郎氏が親族企業のために外国人政策を動かしたことを示す資料は、今回確認した範囲では見つかっていない。
ただ、有力政治家の親族が経営に関わる企業グループが、実際に特定技能の外国人材事業を展開していることは確認できる。
政界の名前が並ぶ外国人材団体「NAGOMi」
外国人材政策を追うと、さらに政治家の名前が並ぶ団体が出てくる。
一般財団法人「外国人材共生支援全国協会」、通称NAGOMiだ。
現在の役員名簿では、最高顧問が元自民党幹事長の二階俊博氏。代表理事・会長は同じく元自民党幹事長の武部勤氏。副会長には元厚生労働相の塩崎恭久氏らが入り、顧問には元衆議院議長の大島理森氏もいる。
NAGOMiは自らの事業として、
「グローバル人材共生社会実現のための政策立案及び要請活動」
を掲げている。
さらに、送り出し機関、監理団体、登録支援機関、受入企業・団体などとの情報交換も事業として明記している。
設立経緯も公開されている。
NAGOMiの趣意書によると、技能実習生をめぐる関係省庁への要請活動を行う中、二階俊博氏から政府と緊密に連携する監理団体の全国組織を設立してはどうかとの示唆を受け、設立に向けた運動を始めたとしている。
父は業界団体会長、息子は国会の法務委員
NAGOMi会長・武部勤氏の息子、武部新氏は現職の衆議院議員だ。
2026年4月の衆議院法務委員会の記録にも、武部新氏は委員として名前がある。同じ委員会では、出入国管理及び難民認定法の改正案も審議されている。
NAGOMiと政界の接点は、役員名簿だけではない。
2025年11月の設立5周年全国大会には法務大臣が出席し、交歓会には財務大臣、国会議員らが参加。元法務大臣や塩崎恭久氏らによる外国人材をテーマにしたシンポジウムも開かれている。
2026年3月の仙台フォーラムでも、宮城県知事、監理団体、登録支援機関、受入企業の代表者らが参加している。
「利権」と断定できる資料はない
ここまで公開情報から確認できるのは、政治家の親族が外国人材関連事業に関わっているケースがあること。
そして、外国人材の受け入れについて政策要請を行う全国団体に、元閣僚や有力政治家が参加していることだ。
一方、親族企業への利益誘導や、特定企業を利する目的で制度が変更されたことを示す資料は、今回確認した範囲では見つかっていない。
日本の在留外国人は412万人を超えた。外国人労働者も257万人で過去最多となり、政府は特定技能と育成就労を人手不足対策に組み込んでいる。
欧州では、不法入国や難民申請、送還をめぐる管理制度が強化された。
日本では、さらに外国人材を受け入れる制度が動き始める。
誰が制度を提案するのか。誰が政府へ要望するのか。誰が制度を利用して事業を行うのか。
公開情報を並べるだけでも、外国人受け入れ政策の周辺に、政治家、業界団体、親族企業という複数の接点があることは確認できる。


